10:45 〜 11:00
[STT49-01] 重力偏差計測の地熱探査への応用
★招待講演
キーワード:重力偏差、地熱探査、小国・九重、バリオグラム、断層、フラワー構造
地熱資源は、CO2の排出が少ない環境に調和した再生可能資源で、我が国で豊富な資源が見積もられている。また、地熱資源による発電は、天候の影響を受けず長期間にわたって安定な電量が供給できるほか、熱としての利用も可能で、野菜などの栽培に利用されている。2011年の東日本大震災とそれに続く原子力発電所の事故に伴い、原子力発電に代わるベース電源としての期待や自然公園内の開発の条件付きながらの認可など、2002年以降停滞していた開発の気運が近年高まりを見せており、自然公園内を含めた広域の調査の必要が求められている。
1980年のNEDO(新エネルギー総合開発機構)の設立時に始まった地熱開発促進調査でも、地質・地化学での調査や重力探査などの広域の探査手法が最初の調査で行われた。重力探査は大まかな地質構造を把握するために用いられてきたが、近年、重力偏差を測定することにより、より細かな地質構造を求める取り組みが行われている。特に、重力偏差を空中にて測定する方法は、豪州など広大な探査域を有する地域での資源探査など、広い範囲を一様な探査密度にて探査ができる特長を有している。また、地表からの調査では、地表条件に左右されることや、ひとつの地域を数回に分けて測定することによる測定期日で系統的な誤差が入る可能性もある。一方、飛行機やヘリコプターを用いた空中物理探査では、広範囲を一定の測定間隔での測定が可能であり、非常に短時間で均質なデータが取得される。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)では、2012年度に空中物理探査の技術を用い重力と電磁手法による地熱資源ポテンシャル調査を12地域において行なった。熊本県小国町および大分県九重町にまたがる涌蓋山周囲と阿蘇山周囲にて重力偏差によるデータの取得も昨年度実施された。JOGMECで用いられたデータ取得方法は、重力偏差の全成分が取得できるFull Tensor Measurementではなく、2つの独立成分を取得(Partial Tensor Measurement)して、他の成分はモデルにより推定値を求める方法であることから、モデルの性質により結果が変化する可能性がある。また、得られたデータの測線間距離は、空中での測定に用いられているヘリコプター航跡間の距離となる(一般的には250m)が、航跡方向の測定間隔は、サンプリング周波数に依存する(現在の仕様ではおよそ5m)など、測定間隔が方向により大幅に異なる測定データになっている。このため、測定密度の高い航行測線方向のデータのみを用いてバリオグラム解析を行うことにより地熱資源に特徴的な情報の抽出を試みた。
バリオグラムは、データセットの空間的な連続性または粗さを特徴付ける統計的な手法であり、鉱山における金の品位推定方法として開発されたが、空間的な特徴を表記することから鉱山に限らず気象学や農学などを基礎データとする地球統計学でしばしば用いられている手法である。バリオグラムは、2地点での観測値(ZiとZj)の差の2乗を2点間距離がある値(h)以下となるすべての組に対して足し合わせ、組の数の2倍で割ったものである(実験バリオグラムと呼ばれている)。
γ(h)=(1/2|N(h)|) Σ(Zi-Zj)2
なお、正確にはγ(h)をセミバリオグラムと呼び、バリオグラムは2で除する前の値2γ(h)を呼ぶのだが、混同して用いられる場合が多い。また、i地点とj地点は空間上に分布をしていることから一般的にはベクトルと考えてよいが、本解析ではヘリコプターが1直線に飛行をした時の観測結果を用いることから、スカラー値として扱うことにする。N(h)は、距離がhである地点対の数であるが、2地点間の距離が許容誤差(±Δh)の範囲内であれば、距離がhであるとみなして実験バリオグラムを計算する。また、N(h)がhに対して十分に大きい場合には、不偏分散 V、自己共分散 C(h)、自己相関係数 r(h)との間に以下のような関係がある。
γ(h) = V -C(h) = V{1-r(h)}
これは、2点間距離hの増加により増加をするバリオグラムが、ある距離hにて自己相関が高くなるとゼロ(ないしは極小)になることを示している。すなわち、バリオグラムは自己相関の表現の1つであり、何らかの事象が繰り返されていると、バリオグラムが極小値を取ることが予想される。計測地点で、断層が地表に露出するときに発生するフラワー構造が見られるのであれば、このような断層の繰り返し構造をバリオグラム解析でとらえられる可能性がある。バリオグラムでの解析と空間フィルターの一つであるSI解析を小国・九重地域で取得された重力偏差データに適用し、熱水の流動路を推定した。この研究は、JOGMECの取得したデータを用いて熊本大学と住鉱資源開発(株)との共同研究として実施された。
1980年のNEDO(新エネルギー総合開発機構)の設立時に始まった地熱開発促進調査でも、地質・地化学での調査や重力探査などの広域の探査手法が最初の調査で行われた。重力探査は大まかな地質構造を把握するために用いられてきたが、近年、重力偏差を測定することにより、より細かな地質構造を求める取り組みが行われている。特に、重力偏差を空中にて測定する方法は、豪州など広大な探査域を有する地域での資源探査など、広い範囲を一様な探査密度にて探査ができる特長を有している。また、地表からの調査では、地表条件に左右されることや、ひとつの地域を数回に分けて測定することによる測定期日で系統的な誤差が入る可能性もある。一方、飛行機やヘリコプターを用いた空中物理探査では、広範囲を一定の測定間隔での測定が可能であり、非常に短時間で均質なデータが取得される。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)では、2012年度に空中物理探査の技術を用い重力と電磁手法による地熱資源ポテンシャル調査を12地域において行なった。熊本県小国町および大分県九重町にまたがる涌蓋山周囲と阿蘇山周囲にて重力偏差によるデータの取得も昨年度実施された。JOGMECで用いられたデータ取得方法は、重力偏差の全成分が取得できるFull Tensor Measurementではなく、2つの独立成分を取得(Partial Tensor Measurement)して、他の成分はモデルにより推定値を求める方法であることから、モデルの性質により結果が変化する可能性がある。また、得られたデータの測線間距離は、空中での測定に用いられているヘリコプター航跡間の距離となる(一般的には250m)が、航跡方向の測定間隔は、サンプリング周波数に依存する(現在の仕様ではおよそ5m)など、測定間隔が方向により大幅に異なる測定データになっている。このため、測定密度の高い航行測線方向のデータのみを用いてバリオグラム解析を行うことにより地熱資源に特徴的な情報の抽出を試みた。
バリオグラムは、データセットの空間的な連続性または粗さを特徴付ける統計的な手法であり、鉱山における金の品位推定方法として開発されたが、空間的な特徴を表記することから鉱山に限らず気象学や農学などを基礎データとする地球統計学でしばしば用いられている手法である。バリオグラムは、2地点での観測値(ZiとZj)の差の2乗を2点間距離がある値(h)以下となるすべての組に対して足し合わせ、組の数の2倍で割ったものである(実験バリオグラムと呼ばれている)。
γ(h)=(1/2|N(h)|) Σ(Zi-Zj)2
なお、正確にはγ(h)をセミバリオグラムと呼び、バリオグラムは2で除する前の値2γ(h)を呼ぶのだが、混同して用いられる場合が多い。また、i地点とj地点は空間上に分布をしていることから一般的にはベクトルと考えてよいが、本解析ではヘリコプターが1直線に飛行をした時の観測結果を用いることから、スカラー値として扱うことにする。N(h)は、距離がhである地点対の数であるが、2地点間の距離が許容誤差(±Δh)の範囲内であれば、距離がhであるとみなして実験バリオグラムを計算する。また、N(h)がhに対して十分に大きい場合には、不偏分散 V、自己共分散 C(h)、自己相関係数 r(h)との間に以下のような関係がある。
γ(h) = V -C(h) = V{1-r(h)}
これは、2点間距離hの増加により増加をするバリオグラムが、ある距離hにて自己相関が高くなるとゼロ(ないしは極小)になることを示している。すなわち、バリオグラムは自己相関の表現の1つであり、何らかの事象が繰り返されていると、バリオグラムが極小値を取ることが予想される。計測地点で、断層が地表に露出するときに発生するフラワー構造が見られるのであれば、このような断層の繰り返し構造をバリオグラム解析でとらえられる可能性がある。バリオグラムでの解析と空間フィルターの一つであるSI解析を小国・九重地域で取得された重力偏差データに適用し、熱水の流動路を推定した。この研究は、JOGMECの取得したデータを用いて熊本大学と住鉱資源開発(株)との共同研究として実施された。