日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT49] 空中からの地球計測とモニタリング

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 301A (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所、共同)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、座長:楠本 成寿

11:30 〜 11:45

[STT49-04] 空中電磁探査技術を活用した、那智川流域での表層崩壊危険箇所の抽出手法の検討

*木下 篤彦1西岡 恒志2田中 健貴3桜井 亘1河戸 克志4 (1.国土交通省国土技術政策総合研究所、2.和歌山県土砂災害啓発センター、3.国土交通省近畿地方整備局大規模土砂災害対策技術センター、4.大日本コンサルタント(株))

キーワード:空中電磁探査、表層崩壊、ボーリング調査

那智川流域では、2011年9月の台風12号による災害により、表層崩壊・土石流が発生し、下流域で大きな被害が発生した。このため、今後同様の被害を防ぐには、流域で表層崩壊のリスクが高い斜面を抽出することが重要である。表層崩壊危険斜面を抽出する手法として、既往研究では、斜面勾配や土質強度から危険度を評価する手法が提案されている。これらの手法は危険箇所を簡易的に計算により求められるというメリットがあるが、地質構造や水位変化などの地下の情報が反映されにくい、というデメリットもある。その他、ボーリング調査や電気探査、弾性波探査などがある。これらの手法は地下情報が得られるというメリットがあるが、狭いエリアの情報しか得られない上に、コストが高いというデメリットがある。そこで著者らは、これらの問題点を解決する手法の一つとして、空中電磁探査を提案している。本研究の目的は、広いエリアで空中電磁探査により地下100mより浅い範囲の比抵抗値を得て、その分布から表層崩壊危険斜面を抽出する技術を開発することである。

 空中電磁探査の特徴として、地下の地質構造の鉛直変化が推定できること、地下水位の高さが推定できること、の2点が挙げられる。そこで本研究では、まず2012年に那智川流域(13.4km2)において、空中電磁探査を実施した。その後、2016年より空中電磁探査の結果を検証する目的で、比抵抗値の縦断分布が大きく異なる2箇所を選んで、それぞれについてボーリング調査を行うとともに地下水位の変動を調査した。これにより、崩壊しやすい箇所とそうでない箇所の比抵抗値分布の違いについて検証した。

 本研究から、那智川流域での崩壊しやすい箇所の特徴として、地下に比抵抗値が大きく変化するエリアが分布していることが挙げられる。那智川流域の場合、これらのエリアは、花崗斑岩(熊野酸性岩)と堆積岩(熊野層群)の地質境界であると推定される。堆積岩は水を通しにくい性質があるため、地質境界の方向や角度によっては、斜面の水の流れが阻害され、斜面が崩壊するおそれもある。このため、地下の地質構造が、水の流れ方に大きな影響を与え、表層崩壊の危険度が左右されることが示唆された。