[STT49-P01] 航空機オルソ画像を用いた画像解析による熊本地震の建物被害状況把握手法の検証
★招待講演
キーワード:航空写真、画像解析、地理情報システム、数値表層モデル、領域分割、テクスチャ解析
災害発生直後の即時的、かつ広域な被害状況把握手法として航空写真判読やそれを用いた画像解析は重要である。2016年熊本地震においては4/14に発生したM6.5の前震発生直後の4/15、および4/16に発生したM7.3の本震発生直後の4/19,20にそれぞれ、益城町、西原村、熊本市東区等の建物被害集中地域において航空写真を取得した。我々はこれらの被害画像を用いて、目視判読により建物の被害レベルを被害無、被害小、被害中、被害大の4つに区分するとともに、建物の形状から木造/非木造を区分し、さらに異なる時期に撮影された航空写真(国土画像情報)の比較により建築年代の新旧を区分した。また、これらのデータを国土地理院が公開する基盤地図情報ポリゴン(建築物)と紐づけた建物被害GISデータを構築した。本研究ではこれらの航空写真および建物被害GISデータを用いて以下に示す画像解析を行い、それぞれの手法を用いた被害指標と目視判読による被害区分との関係について考察した。
まず、4/15および4/20に撮影された航空写真を用いてステレオマッチングにより前震直後および本震直後における50cm解像度のDSM(数値表層モデル)を作成した。また、同じ範囲において国土地理院によって実施された2006年時点の航空レーザー測量データを入手し、50cm解像度のDSMを作成した。さらに、それぞれのDSM差分を前述のGISデータを用いてポリゴン毎に抽出することにより、熊本地震の前震前後、本震前後の建物高さ変化データを作成し、4区分した建物被害レベルとの比較を行った。その結果、被害大の建物において層破壊を示す2m以上の高さ変化が顕著に生じていることが確認でき(付図の左側)、建物被害抽出に航空機を用いて作成したDSM差分の活用が有効であることが示された。
次に、4/15および4/19,20に撮影された航空写真を用いてオブジェクトベースのマルチスケール領域分割を実施後、RGB輝度の平均値を用いてHSV色空間に変換し、領域分割画像から取得したサンプルを用いて最もよくブルーシート領域を抽出できるようにHSVの閾値を設定することによりブルーシート領域の自動抽出を行い、ポリゴンデータを作成した。これらのブルーシート領域の面積が建物ポリゴンの面積に占める割合と建物被害レベルとの関係を調査した結果、被害小から被害中でブルーシート面積率が大きくなり、これらの被害レベルの抽出にブルーシート領域のデータが活用可能であることが分かった(付図の右側、4/19の航空写真から作成)。
さらに、4/20に撮影された航空写真を用いてテクスチャ解析を実施し、建物のテクスチャと被害区分との関係について整理した。具体的には航空写真画像に8近傍のラプラシアンフィルタを適用して先鋭化を実施後、建物ポリゴン内のテクスチャ特徴量を集計した。その結果、建物被害レベルが高いほどテクスチャ輝度値の標準偏差が大きくなることが分かった。
また、4/20に撮影された航空写真を用いてエッジ解析を実施し、建物輪郭と被害区分との関係について整理した。エッジ解析の手順は画像に複数のフィルタを掛けて建物の輪郭部分を強調後、GISソフトを用いて輪郭線をポリゴン化した後、元の建物ポリゴンと輪郭ポリゴンとの面積比を求めるというものである。その結果、被害大の建物において特に建物ポリゴンに占める建物の輪郭部分の割合が小さくなることがわかった。
以上、本研究において実施した画像解析手法において有効に検出可能な被害区分についてまとめると、DSMによる建物高さ差分は倒壊、層破壊の検出に有効であり、ブルーシート領域抽出は一部損壊~半壊相当の被害検出に有効であることが示された。また、テクスチャ解析やエッジ解析による被害指標は被害レベルと相関があることが確認できた一方、これら単独で建物被害区分に使用する閾値を設定することは困難であることが分かった。しかし、これらを他の画像解析手法と組み合わせることにより被害抽出の精度を向上させることが可能になるものと考えられる。
今後はこれらの指標を融合した画像認識による被害自動判別手法について検討するとともに、別途開発中の機械学習を用いた被害自動判別手法と組み合わせ、これまで以上に迅速かつ信頼性の高い被害判別手法の開発について検討していきたい。
謝辞:本研究は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」によって実施された。地震前のDSM作成にあたっては国土地理院から提供された航空レーザー測量データを利用した。
まず、4/15および4/20に撮影された航空写真を用いてステレオマッチングにより前震直後および本震直後における50cm解像度のDSM(数値表層モデル)を作成した。また、同じ範囲において国土地理院によって実施された2006年時点の航空レーザー測量データを入手し、50cm解像度のDSMを作成した。さらに、それぞれのDSM差分を前述のGISデータを用いてポリゴン毎に抽出することにより、熊本地震の前震前後、本震前後の建物高さ変化データを作成し、4区分した建物被害レベルとの比較を行った。その結果、被害大の建物において層破壊を示す2m以上の高さ変化が顕著に生じていることが確認でき(付図の左側)、建物被害抽出に航空機を用いて作成したDSM差分の活用が有効であることが示された。
次に、4/15および4/19,20に撮影された航空写真を用いてオブジェクトベースのマルチスケール領域分割を実施後、RGB輝度の平均値を用いてHSV色空間に変換し、領域分割画像から取得したサンプルを用いて最もよくブルーシート領域を抽出できるようにHSVの閾値を設定することによりブルーシート領域の自動抽出を行い、ポリゴンデータを作成した。これらのブルーシート領域の面積が建物ポリゴンの面積に占める割合と建物被害レベルとの関係を調査した結果、被害小から被害中でブルーシート面積率が大きくなり、これらの被害レベルの抽出にブルーシート領域のデータが活用可能であることが分かった(付図の右側、4/19の航空写真から作成)。
さらに、4/20に撮影された航空写真を用いてテクスチャ解析を実施し、建物のテクスチャと被害区分との関係について整理した。具体的には航空写真画像に8近傍のラプラシアンフィルタを適用して先鋭化を実施後、建物ポリゴン内のテクスチャ特徴量を集計した。その結果、建物被害レベルが高いほどテクスチャ輝度値の標準偏差が大きくなることが分かった。
また、4/20に撮影された航空写真を用いてエッジ解析を実施し、建物輪郭と被害区分との関係について整理した。エッジ解析の手順は画像に複数のフィルタを掛けて建物の輪郭部分を強調後、GISソフトを用いて輪郭線をポリゴン化した後、元の建物ポリゴンと輪郭ポリゴンとの面積比を求めるというものである。その結果、被害大の建物において特に建物ポリゴンに占める建物の輪郭部分の割合が小さくなることがわかった。
以上、本研究において実施した画像解析手法において有効に検出可能な被害区分についてまとめると、DSMによる建物高さ差分は倒壊、層破壊の検出に有効であり、ブルーシート領域抽出は一部損壊~半壊相当の被害検出に有効であることが示された。また、テクスチャ解析やエッジ解析による被害指標は被害レベルと相関があることが確認できた一方、これら単独で建物被害区分に使用する閾値を設定することは困難であることが分かった。しかし、これらを他の画像解析手法と組み合わせることにより被害抽出の精度を向上させることが可能になるものと考えられる。
今後はこれらの指標を融合した画像認識による被害自動判別手法について検討するとともに、別途開発中の機械学習を用いた被害自動判別手法と組み合わせ、これまで以上に迅速かつ信頼性の高い被害判別手法の開発について検討していきたい。
謝辞:本研究は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」によって実施された。地震前のDSM作成にあたっては国土地理院から提供された航空レーザー測量データを利用した。