[STT49-P06] 無人ヘリコプターを用いた登別火山の空中調査技術の工夫点
キーワード:無人ヘリコプター、産官学連携、火山
1.はじめに:
火山活動時の立入規制範囲内の調査において無人ロボット技術の応用が有効であることから,産官学連携のもと北海道開発局所有の無人小型ヘリを用いて樽前火山、有珠火山及び登別火山にて調査技術の開発を実施している.これまで,温泉水の採水,火山噴出物サンプリングのほか、空中磁気測定,火山ガス濃度計測などの調査を試み,いずれも実用可能であることを確認している.ここでは、空中調査技術の工夫点として、高所作業車を用いたアンテナ設置方法、空中からの採水方法、火山噴出物サンプリング方法について使用機材や具体的な方法について論じる。
2.無人小型ヘリの諸元及び調査地:
本調査で用いた機体は、北海道開発局所有の自律型無人ヘリコプター(ヤマハRMAX-G1)である。基地局と操作系無線を接続した状態で飛行しており、飛行経路の変更や無人ヘリ搭載カメラの操作、センサーをつりさげるウインチの上げ下げの操作等を随時行うことができる。最大飛行時間は約90分、飛行範囲は基地局から半径最大5km、最大搭載量は標高0m、気温20℃の場合10kgまで可能であり、5kg程度の観測機器や装置であれば標高1,300m程度まで調査した実績を有する。
本調査は登別火山を調査地とし、噴火警戒レベル上昇時に立入規制範囲外となる上登別付近の標高578.7mの地点を離発着場所とし、採水については1.9km離れた大湯沼、火山噴出物サンプリングについては2.0km離れた日和山北側斜面まで飛行し、空中から調査を実施している。
3.高所作業車を用いたアンテナ設置方法:
基地局と小型無人ヘリとの無線交信は、操作系は2.4GHz帯データ通信、カメラ映像についてはアナログ1.2GHz帯を用いている。両電波とも見通しを確保する必要があり、特に操作系が途切れた場合、自動帰還の機能が作動し、調査が中断される。樹木については遮断されないこともあるが、本調査では高所作業車を用いて両アンテナを樹木帯より高所に設置し、完全な見通しを確保して調査を実施している。高所作業はいわゆる「スーパーデッキ」と呼ばれるタイプで、作業台が2.5m×1.5m程度のものである。これを用いることでアンテナ操作者とヘリの目視監視員の2名を高所作業につかせ、アンテナを手すりに固定することができる。
4.空中からの採水方法:
大湯沼上空に移動し、対地約50m~60mの高さでホバリングを行い、吊り下げた採水器(万能式地下水採水器 宮本理研工業株式会社)をウインチで降下させ、採水している。比較的単純な方法であるが、(1)採水時に沼底の泥を入れないこと、(2)地上で採水器を横倒しさせ溢水させないことについて工夫が必要であった。(1)については、直射日光が当たっているタイミングに降下させ、採水器の影がヘリのカメラで確認できるようにし、沼面と採水器の距離を確認しながら実施することで克服できた。(2)については、横棒をあらかじめ設置し、その5m程度上空でホバリングし、ウインチ操作で採水器を降ろしながら横棒に立てかけることで成功した。
5.火山噴出物サンプリング方法:
火山噴出物サンプリングについても、対地約50m~60mの高さでホバリングを行い、吊り下げたサンプラーをウインチで降下させ、火山噴出物を採取している。あらかじめ目標地点に2m×2m四方のブルーシートを固定し、その上に火山灰を数cmの厚さで設置した。設置した火山灰は日和山周辺で地表付近に普通にみられるKt-1と呼ばれる降下軽石~火山灰で、2~3cm程度の軽石と細粒火山灰とが含まれている。2km先の基地局から操作し、2m×2mの目標にサンプラーを接地させることに成功しているものの、サンプラーはできるだけ単純なものであることが望ましい。ボールタイプやバケットタイプなどの形状の異なるものを試し、その中でボールタイプについては、両面テープで火山噴出物を付着させる単純な方法をとっているが、本調査では次の工夫を行っている。接地面が平であるほど安定して採取できることから市販の漬物石を用い、ウインチの負担を考慮し1.5kgが最適と判断している。また、使用する両面テープについては、(1)厚さ1.2mm、(2)厚さ0.75mm(プラスティック用)、(3)厚さ2mm、(4)厚さ0.75mm(万能タイプ)を試したところ(1)と(4)が付着量が多く、(3)が最も少ないという結果となった。
6.おわりに:
噴火時に緊急に調査を実施するには、ここのあげた工夫点をノウハウとして所有している必要があり、また調査する者も定期的に訓練を実施することが重要である。
火山活動時の立入規制範囲内の調査において無人ロボット技術の応用が有効であることから,産官学連携のもと北海道開発局所有の無人小型ヘリを用いて樽前火山、有珠火山及び登別火山にて調査技術の開発を実施している.これまで,温泉水の採水,火山噴出物サンプリングのほか、空中磁気測定,火山ガス濃度計測などの調査を試み,いずれも実用可能であることを確認している.ここでは、空中調査技術の工夫点として、高所作業車を用いたアンテナ設置方法、空中からの採水方法、火山噴出物サンプリング方法について使用機材や具体的な方法について論じる。
2.無人小型ヘリの諸元及び調査地:
本調査で用いた機体は、北海道開発局所有の自律型無人ヘリコプター(ヤマハRMAX-G1)である。基地局と操作系無線を接続した状態で飛行しており、飛行経路の変更や無人ヘリ搭載カメラの操作、センサーをつりさげるウインチの上げ下げの操作等を随時行うことができる。最大飛行時間は約90分、飛行範囲は基地局から半径最大5km、最大搭載量は標高0m、気温20℃の場合10kgまで可能であり、5kg程度の観測機器や装置であれば標高1,300m程度まで調査した実績を有する。
本調査は登別火山を調査地とし、噴火警戒レベル上昇時に立入規制範囲外となる上登別付近の標高578.7mの地点を離発着場所とし、採水については1.9km離れた大湯沼、火山噴出物サンプリングについては2.0km離れた日和山北側斜面まで飛行し、空中から調査を実施している。
3.高所作業車を用いたアンテナ設置方法:
基地局と小型無人ヘリとの無線交信は、操作系は2.4GHz帯データ通信、カメラ映像についてはアナログ1.2GHz帯を用いている。両電波とも見通しを確保する必要があり、特に操作系が途切れた場合、自動帰還の機能が作動し、調査が中断される。樹木については遮断されないこともあるが、本調査では高所作業車を用いて両アンテナを樹木帯より高所に設置し、完全な見通しを確保して調査を実施している。高所作業はいわゆる「スーパーデッキ」と呼ばれるタイプで、作業台が2.5m×1.5m程度のものである。これを用いることでアンテナ操作者とヘリの目視監視員の2名を高所作業につかせ、アンテナを手すりに固定することができる。
4.空中からの採水方法:
大湯沼上空に移動し、対地約50m~60mの高さでホバリングを行い、吊り下げた採水器(万能式地下水採水器 宮本理研工業株式会社)をウインチで降下させ、採水している。比較的単純な方法であるが、(1)採水時に沼底の泥を入れないこと、(2)地上で採水器を横倒しさせ溢水させないことについて工夫が必要であった。(1)については、直射日光が当たっているタイミングに降下させ、採水器の影がヘリのカメラで確認できるようにし、沼面と採水器の距離を確認しながら実施することで克服できた。(2)については、横棒をあらかじめ設置し、その5m程度上空でホバリングし、ウインチ操作で採水器を降ろしながら横棒に立てかけることで成功した。
5.火山噴出物サンプリング方法:
火山噴出物サンプリングについても、対地約50m~60mの高さでホバリングを行い、吊り下げたサンプラーをウインチで降下させ、火山噴出物を採取している。あらかじめ目標地点に2m×2m四方のブルーシートを固定し、その上に火山灰を数cmの厚さで設置した。設置した火山灰は日和山周辺で地表付近に普通にみられるKt-1と呼ばれる降下軽石~火山灰で、2~3cm程度の軽石と細粒火山灰とが含まれている。2km先の基地局から操作し、2m×2mの目標にサンプラーを接地させることに成功しているものの、サンプラーはできるだけ単純なものであることが望ましい。ボールタイプやバケットタイプなどの形状の異なるものを試し、その中でボールタイプについては、両面テープで火山噴出物を付着させる単純な方法をとっているが、本調査では次の工夫を行っている。接地面が平であるほど安定して採取できることから市販の漬物石を用い、ウインチの負担を考慮し1.5kgが最適と判断している。また、使用する両面テープについては、(1)厚さ1.2mm、(2)厚さ0.75mm(プラスティック用)、(3)厚さ2mm、(4)厚さ0.75mm(万能タイプ)を試したところ(1)と(4)が付着量が多く、(3)が最も少ないという結果となった。
6.おわりに:
噴火時に緊急に調査を実施するには、ここのあげた工夫点をノウハウとして所有している必要があり、また調査する者も定期的に訓練を実施することが重要である。