日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT49] 空中からの地球計測とモニタリング

2018年5月21日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所、共同)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

[STT49-P10] 重力偏差テンソルを用いた2次元の断層タイプの自動推定

*楠本 成寿1 (1.富山大学大学院理工学研究部(理学))

キーワード:断層形状、重力偏差テンソル、自動推定

断層やカルデラ壁といった構造境界の傾斜角は,それらの形成メカニズムを議論するうえで重要な役割を果たす。特に,断層の傾斜角は、強振動予測の計算等で重要な役割を果たすため,ハザードマップの作成で重要なパラメータである。そのため,構造境界の傾斜角を知るために,地質調査に加え,地震波探査や重力探査といった物理探査が有効である。重力探査は,比較的低コストで実施できるため,実施される機会が多い。近年は,重力ポテンシャルの空間2階微分で定義される重力偏差探査も行われるようになってきた。

Beiki and Pedersen (2010)は,重力偏差テンソルの最大固有ベクトルが重力異常の原因体の方を向くことを示した。楠本(2015)は,基盤は高密度の物体の集合体からなると見做し,Beiki and Pedersen (2010)のアイデアを断層傾斜角推定に応用した。この手法は,実際の断層傾斜角と調和的な結果を与えることが示されている。この手法は,テンソルの最大固有ベクトルが原因体の方向を向く性質を利用しているため,重力場の解析では,ダイクや基盤といった高密度体や正断層の傾斜角の推定に適している。一方で,低密度体や逆断層の傾斜角推定ではテンソルの最小固有ベクトルが適していることが,Kusumoto (2017)により示されている。すなわち,この手法を用いる場合,断層のタイプについての先験情報が必要である。

断層が地表に露出している場合や,地震波探査等により断層タイプが分かっている場合,観測された断層タイプに応じた固有ベクトルを用いることで断層傾斜角を推定できる。一方で,埋没断層では何らかの方法で断層タイプを知る必要がある。本研究では,断層位置抽出によく用いられる水平一次微分と最大固有ベクトルの関係から断層タイプを判別する手法を提案する。

[謝辞]
この研究は科学研究費助成事業(課題番号:17K01325)によって行われました。記して感謝致します。

[文献]
Beiki M, Pedersen LB (2010) Eigenvector analysis of gravity gradient tensor to locate geologic bodies. Geophysics 75: I37–I49.
Kusumoto S (2017) Eigenvector of gravity gradient tensor for estimating fault dips considering fault type. Progress in Earth and Planetary Science. 4:15
楠本成寿 (2015) 重力勾配テンソルの固有ベクトルを用いた断層あるいは構造境界の傾斜角の推定. 物理探査. 68: 277-287.