16:25 〜 16:40
[STT50-04] 光ファイバーとDASテクノロジーを使った坑井内での地震観測
キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、地震観測、地震
DASテクノロジーは、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知する目的で、2011年頃から石油・ガス産業に導入されている。近年では“heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)と呼ばれる位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術の適用により、Vertical Seismic Profile(以下、VSP)を含むサイスミックデータ取得ができるようになった1)。その第三世代の取得装置が2016年後半から使われ始めたことはJpGU-AGU2017にて紹介した2)。
2017年8月、国際石油開発帝石株式会社(以下、INPEX社)の依頼により、新潟県新潟市の同社既存坑井においてhDVS装置を用いたDAS VSPの実証試験を行った。最大深度4,390 mの傾斜井に4本の光ファイバーを挿入したコイルチュービング(以下、CT)を降ろし、その内の1本のファイバー(シングルモードファイバー)に第三世代のhDVS取得装置をつなげ、VSPデータの収録を行ったものである。CT内にファイバーを挿入したままDAS VSPデータ収録を目的とする大規模現場実証試験は世界初の試みである。
同実証試験中の夜間、VSP作業が行われていない時間帯にバックグラウンドノイズを測定する目的でhDVSの連続測定を実施した。本稿では、その連続測定データを用い、自然地震波の観測が行えるか検証した結果を報告する。
バックグラウンドノイズ測定は、8月23日夜間から24日早朝にかけて、および8月27日早朝の2度、合計約12時間に渡り実施した。測定データを詳細に調べると、8月26日19:15 UTC(8月27日4:15 JST)に記録されたデータに自然地震波と思われる波形が確認できた。気象庁の震源リストのデータと参照したところ、新潟県中越地方で発生した以下の地震記録と同一であると考えている。
(2017年8月27日 04時15分14.5秒 緯度37°38.9'N 経度139°5.1'E 深さ10km M2.3 震央地名 新潟県中越地方)
波形から解析したP波の到達時刻は坑井最深部において8月27日4:15:17.8 JST、地表付近において4:15:18.8 JST、S波の到達時刻はそれぞれ4:15:19.9 JST(最深部)、4:15:22.1 JST(地表付近)である。これから見かけの地震波伝搬速度を計算するとP波とS波の記録だけで、P波がS波の2倍以上の速さで伝わったこともわかる。今回記録された自然地震波を図1に示す。なお、測定パラメータは、ゲージ長20 m、空間サンプリング5 m、および、サンプリング周期が1 msecであり、1ファイルのレコーディング時間を30秒とした。
防災科学技術研究所(以下、防災科研)が公開しているHi-netによる連続波形画像との比較も行った。19か所ある新潟県内の観測地点のうち、坑井から約5km離れた新潟県五泉市村松にある観測点が最も近く、その連続波形記録を参照したところ、hDVSの測定データとほぼ一致することを確認した。CT内に光ファイバーを設置した状態での自然地震波の記録も、日本で初めての事例である。
本観測結果より、hDVS/DASを用いた測定手法は、CCS事業等において、坑井内のモニタリングを行いながら自然地震波の観測システムとしても利用できる可能性が示された。
謝辞:本現場実証試験は、経済産業省から二酸化炭素地中貯留技術研究組合が委託された「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」の一環として、INPEX社の依頼で実施しました。リファレンスとなる地震情報は、気象庁、および防災科研のデータを用いました。これらの会社や機関に対し感謝の意を表します。
引用文献:
1) Kimura, T., Lees, G., and Hartog, A. JpGU 2016 (RAEG 2016), Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology STT17-12, Extended Abstract.
2) Kimura, T, JpGU-AGU 2017, Progress of Seismic Monitoring System using Optical Fiber and DAS Technology STT59-04.
2017年8月、国際石油開発帝石株式会社(以下、INPEX社)の依頼により、新潟県新潟市の同社既存坑井においてhDVS装置を用いたDAS VSPの実証試験を行った。最大深度4,390 mの傾斜井に4本の光ファイバーを挿入したコイルチュービング(以下、CT)を降ろし、その内の1本のファイバー(シングルモードファイバー)に第三世代のhDVS取得装置をつなげ、VSPデータの収録を行ったものである。CT内にファイバーを挿入したままDAS VSPデータ収録を目的とする大規模現場実証試験は世界初の試みである。
同実証試験中の夜間、VSP作業が行われていない時間帯にバックグラウンドノイズを測定する目的でhDVSの連続測定を実施した。本稿では、その連続測定データを用い、自然地震波の観測が行えるか検証した結果を報告する。
バックグラウンドノイズ測定は、8月23日夜間から24日早朝にかけて、および8月27日早朝の2度、合計約12時間に渡り実施した。測定データを詳細に調べると、8月26日19:15 UTC(8月27日4:15 JST)に記録されたデータに自然地震波と思われる波形が確認できた。気象庁の震源リストのデータと参照したところ、新潟県中越地方で発生した以下の地震記録と同一であると考えている。
(2017年8月27日 04時15分14.5秒 緯度37°38.9'N 経度139°5.1'E 深さ10km M2.3 震央地名 新潟県中越地方)
波形から解析したP波の到達時刻は坑井最深部において8月27日4:15:17.8 JST、地表付近において4:15:18.8 JST、S波の到達時刻はそれぞれ4:15:19.9 JST(最深部)、4:15:22.1 JST(地表付近)である。これから見かけの地震波伝搬速度を計算するとP波とS波の記録だけで、P波がS波の2倍以上の速さで伝わったこともわかる。今回記録された自然地震波を図1に示す。なお、測定パラメータは、ゲージ長20 m、空間サンプリング5 m、および、サンプリング周期が1 msecであり、1ファイルのレコーディング時間を30秒とした。
防災科学技術研究所(以下、防災科研)が公開しているHi-netによる連続波形画像との比較も行った。19か所ある新潟県内の観測地点のうち、坑井から約5km離れた新潟県五泉市村松にある観測点が最も近く、その連続波形記録を参照したところ、hDVSの測定データとほぼ一致することを確認した。CT内に光ファイバーを設置した状態での自然地震波の記録も、日本で初めての事例である。
本観測結果より、hDVS/DASを用いた測定手法は、CCS事業等において、坑井内のモニタリングを行いながら自然地震波の観測システムとしても利用できる可能性が示された。
謝辞:本現場実証試験は、経済産業省から二酸化炭素地中貯留技術研究組合が委託された「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」の一環として、INPEX社の依頼で実施しました。リファレンスとなる地震情報は、気象庁、および防災科研のデータを用いました。これらの会社や機関に対し感謝の意を表します。
引用文献:
1) Kimura, T., Lees, G., and Hartog, A. JpGU 2016 (RAEG 2016), Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology STT17-12, Extended Abstract.
2) Kimura, T, JpGU-AGU 2017, Progress of Seismic Monitoring System using Optical Fiber and DAS Technology STT59-04.