日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT50] 地震観測・処理システム

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

[STT50-P08] IoT技術を用いた即時展開型無線地震データ伝送システムの開発

*内田 直希1佐藤 剛至2平原 聡1天間 克宏2河野 俊夫1岡田 知己1 (1.東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター、2.国立研究開発法人 情報通信研究機構 耐災害ICT研究センター)

地震や火山の研究に用いる高精度の観測データを得るためには,その現象に近く,人間によるノイズが小さい場所での観測が不可欠である.しかし,そのような環境は,一般に商用の携帯基地局や光通信網等の展開の際に優先される場所とは正反対であり,地震・火山の観測好適地でデータ通信環境を得ることは困難なことが多い.従って,そのような観測は,オフラインで行われたり,大規模な衛星通信設備(VSAT)を用いたり,携帯網の内部のみで展開されたりなど,制約が多い状況である.これらの制約により,現在,大地震の後の余震観測や他の臨時観測の際に,オンライン観測点を多数,迅速に展開することは困難となっている.本研究では,自然エネルギーでの運用が可能で簡単に展開可能・安価な地震観測データの自営通信システムを開発する.その通信部分にはNerveNetという無線メッシュネットワークシステムのうち,低消費電力かつ小型・小重量を特徴とする可搬性の高いハードウェアを用いた.このハードウェアはラズベリーパイ(小型コンピュータ)とLoRa (Long Range)の通信モジュールから成る.LoRa無線通信規格は,LPWA (Low Power Wide Area)の1つで,比較的長距離 (およそ 10 km) を低速 (292 bps ~ 37.5 kbps)で結ぶことができるものである.岩手県釜石市周辺の実際の臨時地震網での現地調査により,通信の確立はおよそ5km以内にある観測点同士で可能であることがわかった.しかしながら,そのデータ伝送速度は,約9.6kbpsを必要とするリアルタイムの地震波伝送には不足することがわかった.そのため我々は,必要とする地震データが存在する時間帯のみデータを送出するシステムを構築中である.実験では,データ記録装置の中のWINフォーマットの地震波形ファイルをNerveNetにより中継観測点まで送り,そこから東北大学まで携帯通信網で送信した.これらの可搬無線通信テレメータシステムの現地試験により,地震観測システムとしての改良の方向性を明確にできただけでなく,一般に屋外で必要な場所・必要な時間に利用できるIoT実証基盤のプロトタイプの開発に向けた重要な示唆も得ることができた.