15:30 〜 15:45
[SVC39-05] 富士火山湯船第二スコリア噴火のマグマ供給系-相平衡計算とメルト包有物含水量による制約-
キーワード:富士火山、湯船第二スコリア、マグマの結晶度、MELTS計算、斑晶メルト包有物、顕微FT-IR反射分析法
富士火山では近代的な手法で噴火が観測されたことがない。そこで物質科学的に、マグマ溜りの深度や構造を明らかにする必要がある。この考えから、山頂火口から起きた最新の噴火(約 2200 年 前)の産物である湯船第二スコリア(Yu-2)の研究を進めている。サンプルは山頂から東へ約 10km の地点で採取された。スコリアのサイズや発泡の様子から、堆積物を 下位から順にa (層厚 10cm)、 b (90cm)、 c (5cm)、 d (15cm)、 e (60cm) のユニットに分類した。Suzuki and Fujii (2010)は同じ地点のスコリアの石基組織を研究し、この山頂噴火の間に、噴火強度・噴煙柱高度が変化したことを示している。一方、スコリアの全岩組成(50.5-51.2 wt. % SiO2)は、ユニットにより系統的に変化しない。これらスコリアの全てには、かんらん石と斜長石の斑晶(2mm以下)が含まれている。
鈴木(2017, 連合大会要旨)は、各ユニットについて4-6 個のスコリアの薄片を観察するとともに、代表サンプルの斑晶の組成を分析した。その結果、噴火の直前には、1)バルク組成はほぼ同じだが、結晶量の異なる2端成分マグマが存在したこと、2)それぞれが単独、もしくは互いに混合し噴出したこと、を明らかにした。またユニットにより2端成分の関与の仕方が異っている。ユニットaでは両者の混合物が、噴火のクライマックス(b-c)では結晶度の高い端成分のみが、それぞれ関与する。噴火の終期(d-e)では両者が関与するが、スコリアによって混合物であったり、低結晶度の端成分そのものであったりした。低結晶度の端成分の結晶量は3vol. %、高結晶度の端成分では18~19vol. %であり、結晶量の増加は、かんらん石に対し斜長石で顕著である。特に重要なのは、高結晶度のマグマが低結晶度のマグマから進化したことを示す証拠が確認されることであり、それは斜長石斑晶に見られる。低結晶度の端成分には、An92~85の斜長石(500μm長以下)が含まれる(高Anタイプ)。一方、高結晶度の端成分の斜長石は、前述の高Anタイプよりもサイズが大きい上、組成の範囲が低Anにまで及ぶ(An92~65;低 Anタイプ)。低Anタイプの中心部にはAn85以上の均質部が確認されることがあり、それは前述の高Anタイプのサイズに似ている。一方、かんらん石斑晶は、結晶度の異なる2端成分の間で、組成が顕著に異なる。低結晶度の端成分ではFo80-76の高Foタイプ、高結晶度の端成分ではFo76-73の低Foタイプが含まれる。高結晶度の端成分において、斜長石のみが、マグマが低結晶度であった際の痕跡を残しているのは、斜長石でのCaAl-NaSi拡散が、かんらん石でのMg-Fe拡散よりも低速であるためである。他の元素を含めた拡散プロファイルの検討により、低結晶度端成分から高結晶度端成分が発生し、その後噴火に至るまでの時間スケールの検討が行える可能性がある。
マグマ供給系や噴火誘発過程を議論する上で、結晶度の異なる2端成分マグマが、1)同じ深度に存在したのか、2)異なる深度に存在したか(結晶化の進んだものが浅部)、区別することは重要である。そのために、斑晶メルト包有物の含水量と相平衡計算の二つの方法により、2端成分の噴火直前の貯蔵条件を調べた。斑晶メルト包有物の分析は高結晶度端成分のみで実施し、かんらん石斑晶を対象とした。Yasuda (2011, 2014)のFT-IR反射分析法により1.1~1.6 wt.%の含水量が求められた。低結晶度端成分については、その石基組成相当のメルトがリキダス近傍に有る状態で、かんらん石と斜長石を晶出することを制約条件とした。MELTS計算により、その条件は、1110-1120C、 2.5kbar以下、含水量約1.5wt. %であると推定された。すなわち、メルトの含水量は、低結晶度端成分から高結晶度端成分への進化過程で、ほとんど変化していないことになる。前述のように低結晶度端成分は、水に不飽和である。したがって含水量が同じであることは、必ずしもマグマが同じ深度にあったことを示すものではない。今後、高結晶度端成分に相当する噴出物の石基組成データや、そのほかのメルト組成に関わるデータを蓄積し、結晶分化に関するMELTS計算を行うことで、2端成分の貯蔵深度の問題を解決していく必要がある。
鈴木(2017, 連合大会要旨)は、各ユニットについて4-6 個のスコリアの薄片を観察するとともに、代表サンプルの斑晶の組成を分析した。その結果、噴火の直前には、1)バルク組成はほぼ同じだが、結晶量の異なる2端成分マグマが存在したこと、2)それぞれが単独、もしくは互いに混合し噴出したこと、を明らかにした。またユニットにより2端成分の関与の仕方が異っている。ユニットaでは両者の混合物が、噴火のクライマックス(b-c)では結晶度の高い端成分のみが、それぞれ関与する。噴火の終期(d-e)では両者が関与するが、スコリアによって混合物であったり、低結晶度の端成分そのものであったりした。低結晶度の端成分の結晶量は3vol. %、高結晶度の端成分では18~19vol. %であり、結晶量の増加は、かんらん石に対し斜長石で顕著である。特に重要なのは、高結晶度のマグマが低結晶度のマグマから進化したことを示す証拠が確認されることであり、それは斜長石斑晶に見られる。低結晶度の端成分には、An92~85の斜長石(500μm長以下)が含まれる(高Anタイプ)。一方、高結晶度の端成分の斜長石は、前述の高Anタイプよりもサイズが大きい上、組成の範囲が低Anにまで及ぶ(An92~65;低 Anタイプ)。低Anタイプの中心部にはAn85以上の均質部が確認されることがあり、それは前述の高Anタイプのサイズに似ている。一方、かんらん石斑晶は、結晶度の異なる2端成分の間で、組成が顕著に異なる。低結晶度の端成分ではFo80-76の高Foタイプ、高結晶度の端成分ではFo76-73の低Foタイプが含まれる。高結晶度の端成分において、斜長石のみが、マグマが低結晶度であった際の痕跡を残しているのは、斜長石でのCaAl-NaSi拡散が、かんらん石でのMg-Fe拡散よりも低速であるためである。他の元素を含めた拡散プロファイルの検討により、低結晶度端成分から高結晶度端成分が発生し、その後噴火に至るまでの時間スケールの検討が行える可能性がある。
マグマ供給系や噴火誘発過程を議論する上で、結晶度の異なる2端成分マグマが、1)同じ深度に存在したのか、2)異なる深度に存在したか(結晶化の進んだものが浅部)、区別することは重要である。そのために、斑晶メルト包有物の含水量と相平衡計算の二つの方法により、2端成分の噴火直前の貯蔵条件を調べた。斑晶メルト包有物の分析は高結晶度端成分のみで実施し、かんらん石斑晶を対象とした。Yasuda (2011, 2014)のFT-IR反射分析法により1.1~1.6 wt.%の含水量が求められた。低結晶度端成分については、その石基組成相当のメルトがリキダス近傍に有る状態で、かんらん石と斜長石を晶出することを制約条件とした。MELTS計算により、その条件は、1110-1120C、 2.5kbar以下、含水量約1.5wt. %であると推定された。すなわち、メルトの含水量は、低結晶度端成分から高結晶度端成分への進化過程で、ほとんど変化していないことになる。前述のように低結晶度端成分は、水に不飽和である。したがって含水量が同じであることは、必ずしもマグマが同じ深度にあったことを示すものではない。今後、高結晶度端成分に相当する噴出物の石基組成データや、そのほかのメルト組成に関わるデータを蓄積し、結晶分化に関するMELTS計算を行うことで、2端成分の貯蔵深度の問題を解決していく必要がある。