日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC41] 活動的火山

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA(CH-A) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、青木 陽介(東京大学地震研究所、共同)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、大倉 敬宏(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、座長:為栗 健風間 卓仁

15:45 〜 16:00

[SVC41-32] 桜島火山で発生する火砕流を伴う噴火のメカニズム

*為栗 健1井口 正人1 (1.京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)

キーワード:桜島火山、火砕流、噴火

桜島火山では1955年以降、山頂火口においてブルカノ式と呼ばれる爆発的噴火を繰り返している。東側山腹の昭和火口では2006年に58年ぶりに噴火が再開し、2009年以降、噴火活動が活発化している。2010年から2013年まで毎年1000回近くの爆発的噴火を繰り返しており、爆発回数の増加とともに噴火規模が大きくなっている。2014年は爆発回数が約500回と減少したが、噴煙高度が3000~5000mに達する噴火が多く発生している。爆発的噴火の特徴として、火山弾の放出、衝撃波の発生、急激な火山灰や火山ガスの放出が上げられるが、山腹にある昭和火口の爆発的噴火ではそれらに加えて、火砕流の発生が上げられる。
火砕流は高温の火砕物や火山ガスが山腹斜面を高速で流れ下るもので、火山噴火の中で最も危険な現象の一つである。気象庁によると2006年~2014年に37回の火砕流発生が観測されている。すべての爆発的噴火において火砕流を伴うわけではなく、同規模の爆発的噴火でも火砕流が発生しない場合が多く、昭和火口における火砕流発生メカニズムの解明には至っていない。今後、昭和火口の噴火活動がさらに活発化した際には、大規模な火砕流の発生も考えられ、その発生予測が防災上、必要不可欠であり、そのためには昭和火口で発生する火砕流を伴う噴火の発生メカニズムを解明することが重要である。本研究では地球物理学的火山観測から火砕流発生を決定付ける要因を検出し、噴火準備過程の段階で火砕流の発生予測を行うことを目的とする。
火砕流の発生メカニズムを解明する上で重要な情報は爆発時の火道内の物理状況である。爆発前に発生する前駆地震や微動、山体膨張、爆発的噴火に伴う爆発地震、火口底のガス溜まりにおける圧力蓄積などに火道内の物理状況を知る情報が含まれていると考えられる。地盤変動、火山性地震、空気振動、火山ガス、映像等の観測によって爆発的噴火および火砕流のデータを収集し、火砕流発生に関わる物理パラメータを明らかにする必要がある。
爆発前には山体膨張を示す地盤変動が観測される。膨張は噴火の30分~3時間ほど前から開始するものがほとんどであるが、火砕流を伴う噴火の膨張はその中でも比較的長い時間をかけているものが多い。また、爆発前に前駆地震を伴う事象が観測されることがある。前駆地震は時間とともに発生頻度が上がり、振幅が大きくなる傾向がある。火砕流を伴う噴火の前に発生する前駆地震は、発生頻度は多いものの、振幅はさほど大きくならずに噴火に至る傾向がある。
爆発地震には初動の後に火道の収縮によって生じていると考えられる振幅の大きな引き波(D相)が見られる(Tameguri et al., 2002)。火砕流を伴う爆発的噴火の爆発地震ではD相のパルス幅が通常の爆発と比較して0.1~0.2秒長いものが75%を占めている。本発表では爆発的噴火前に観測される地盤変動の膨張と火山性地震の発生パターンなどから火砕流が発生する火道内の状況について考察を行う。