09:45 〜 10:00
[SVC41-40] SfMによる本白根山2018年噴火の火口地形計測
キーワード:SfM、火口、噴出量
1.はじめに
火山噴火による火口や火口付近の地形変化を、詳細に計測することは重要である。地形計測の繰り返しから、噴出率の推移を明らかにし、火山噴火予知に貢献することが可能である。また、火口周辺での不安定土砂の増加量の計測は防災上重要である。しかしながら、噴火直後の火口近辺は、接近が困難で、リモートセンシングや、UAVによる近接撮影が検討されてきた。
2018年1月23日の本白根山の噴火では、雪や強風に阻まれ、UAVによる近接撮影は容易ではなかった。また、航空機による真上からの撮影も雪の影響を受けた。なぜならば、安全確保のために対地高度3000mの制限があったためである。
2.有人ヘリによる斜め撮影
2018年1月28日、前野は読売新聞の協力を得て、本白根山上空を飛行するヘリコプターから火口付近の斜め写真を撮影した。ヘリは火口上空を避け、斜距離で1000mから2000mの距離を保ち旋回飛行した。
3.3Dモデル作成
機上から広角~望遠レンズで撮影した写真、約500枚を使用してSfM法による3Dモデル作成を行った。モデル作成はアジア航測が担当した。使用したソフトは、ContextCaptureで、比較的精度よく作成できた範囲は南北1km東西500mであった。メッシュサイズは火口付近では10cmが可能であった。しかしながら、モデル作成に当たり、地形の変化や雪の影響で、GCPがうまく取れなかった。そのため、モデルの位置や傾きが大きく、そのままでは地形変化量は計算できなかった。そこで、平成27年度レーザ計測(国土交通省提供)による1mメッシュのDEMを参照し、点群比較法を用いて、回転ベクトルと移動量を算出した。回転角は、roll-1度、pitch-4度、yaw-13度であった。その後、XYZの座標を調整し、噴火前の地形との差が小さくなるように位置合わせを行った。この作業は、写真を参照しながら、噴出物や雪の厚さ、樹木による影響を考慮しながら行った。全体を一組のパラメータで合わせることは不可能で、3箇所に分けて行った。
4.地形変化量
1) 鏡池北火口北側火口列
補正後の、地形変化量分布図と地形断面および、地形変化量断面図を図1に示す。鏡池北火口北側火口列は、孤立している火口1~3と、連結している火口4~8および割れ目火口9から構成される。全体の長さは約250mである。火口9を除けば、N78W方向にほぼ直線状に並ぶ。地形変化(高低差)が最大を示すのは、火口6で-16mであるが、北側に噴出物が積みあがっているので、火口縁からの深さは-18mとなる。火口列部分の変化量(容積)は。火口6~7で-6800m3、火口4~5で-3800m3、火口1~3で-330m3となった。一方、火口列の北側近傍と南側近傍には、地形変化量がプラスの部分があり、火口からの噴出物と思われる。その体積は、火口4~7部分の北側で+4900 m3、火口6~7の南側で+1700 m3である。また、火口8は北側の火口壁が緩傾斜で、北北東方向に溝状に70mほど伸びているようにも見える。元地形からも低い部分は-700m3である。これらの火口外の地形変化量は、隙間が多いと考えられるのでみかけ密度補正を行った。その結果、計測範囲内での地形変化量は、マイナス約1万m3ということになった。この値は遠方のテフラから推定されている量の1/5~1/3程度になる。
2)西側火口
西側火口は、スキーコースの60m西側の斜面中腹に位置する。SfMモデルから測定した結果、長径20m、短経は5m、深さは約10mであった。なお、周辺の樹木が倒れていないことや内部に雪が積もっているため、詳細は不明である。
3)鏡池火口
鏡池火口のオルソ写真と噴火後の地形を判読した。南側に長方形の陥没穴があり、その南東延長上に割れ目が連なる。中央部のなだれは雪原の上を北西から南東方向に下っているが、上流へ追跡すると陥没穴に連なるようにも見える。北側の汚れた部分を緑の破線で囲んだ。その西側の縁に、直径数m程度のすり鉢型のくぼみがあり、火山灰か泥水を噴出した可能性がある。
謝辞
国土交通省関東整備局利根川水系砂防事務所からは平成27年航空レーザ測量のデータ使用の許可を得た。また、読売新聞社からは取材ヘリコプターに同乗し写真撮影する機会を得た。
火山噴火による火口や火口付近の地形変化を、詳細に計測することは重要である。地形計測の繰り返しから、噴出率の推移を明らかにし、火山噴火予知に貢献することが可能である。また、火口周辺での不安定土砂の増加量の計測は防災上重要である。しかしながら、噴火直後の火口近辺は、接近が困難で、リモートセンシングや、UAVによる近接撮影が検討されてきた。
2018年1月23日の本白根山の噴火では、雪や強風に阻まれ、UAVによる近接撮影は容易ではなかった。また、航空機による真上からの撮影も雪の影響を受けた。なぜならば、安全確保のために対地高度3000mの制限があったためである。
2.有人ヘリによる斜め撮影
2018年1月28日、前野は読売新聞の協力を得て、本白根山上空を飛行するヘリコプターから火口付近の斜め写真を撮影した。ヘリは火口上空を避け、斜距離で1000mから2000mの距離を保ち旋回飛行した。
3.3Dモデル作成
機上から広角~望遠レンズで撮影した写真、約500枚を使用してSfM法による3Dモデル作成を行った。モデル作成はアジア航測が担当した。使用したソフトは、ContextCaptureで、比較的精度よく作成できた範囲は南北1km東西500mであった。メッシュサイズは火口付近では10cmが可能であった。しかしながら、モデル作成に当たり、地形の変化や雪の影響で、GCPがうまく取れなかった。そのため、モデルの位置や傾きが大きく、そのままでは地形変化量は計算できなかった。そこで、平成27年度レーザ計測(国土交通省提供)による1mメッシュのDEMを参照し、点群比較法を用いて、回転ベクトルと移動量を算出した。回転角は、roll-1度、pitch-4度、yaw-13度であった。その後、XYZの座標を調整し、噴火前の地形との差が小さくなるように位置合わせを行った。この作業は、写真を参照しながら、噴出物や雪の厚さ、樹木による影響を考慮しながら行った。全体を一組のパラメータで合わせることは不可能で、3箇所に分けて行った。
4.地形変化量
1) 鏡池北火口北側火口列
補正後の、地形変化量分布図と地形断面および、地形変化量断面図を図1に示す。鏡池北火口北側火口列は、孤立している火口1~3と、連結している火口4~8および割れ目火口9から構成される。全体の長さは約250mである。火口9を除けば、N78W方向にほぼ直線状に並ぶ。地形変化(高低差)が最大を示すのは、火口6で-16mであるが、北側に噴出物が積みあがっているので、火口縁からの深さは-18mとなる。火口列部分の変化量(容積)は。火口6~7で-6800m3、火口4~5で-3800m3、火口1~3で-330m3となった。一方、火口列の北側近傍と南側近傍には、地形変化量がプラスの部分があり、火口からの噴出物と思われる。その体積は、火口4~7部分の北側で+4900 m3、火口6~7の南側で+1700 m3である。また、火口8は北側の火口壁が緩傾斜で、北北東方向に溝状に70mほど伸びているようにも見える。元地形からも低い部分は-700m3である。これらの火口外の地形変化量は、隙間が多いと考えられるのでみかけ密度補正を行った。その結果、計測範囲内での地形変化量は、マイナス約1万m3ということになった。この値は遠方のテフラから推定されている量の1/5~1/3程度になる。
2)西側火口
西側火口は、スキーコースの60m西側の斜面中腹に位置する。SfMモデルから測定した結果、長径20m、短経は5m、深さは約10mであった。なお、周辺の樹木が倒れていないことや内部に雪が積もっているため、詳細は不明である。
3)鏡池火口
鏡池火口のオルソ写真と噴火後の地形を判読した。南側に長方形の陥没穴があり、その南東延長上に割れ目が連なる。中央部のなだれは雪原の上を北西から南東方向に下っているが、上流へ追跡すると陥没穴に連なるようにも見える。北側の汚れた部分を緑の破線で囲んだ。その西側の縁に、直径数m程度のすり鉢型のくぼみがあり、火山灰か泥水を噴出した可能性がある。
謝辞
国土交通省関東整備局利根川水系砂防事務所からは平成27年航空レーザ測量のデータ使用の許可を得た。また、読売新聞社からは取材ヘリコプターに同乗し写真撮影する機会を得た。