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[SVC41-42] 冬期に冠雪する活火山における火山-雪氷複合現象と災害評価:御嶽山2014年噴火と草津白根山2018年噴火の例
キーワード:草津白根(本白根)火山、御嶽火山、火山泥流・ラハール、冠雪火山、rain-on-snow、複合災害
日本の活火山の約3分の2は冬季に数ヶ月間冠雪するため,噴火による減災計画や対策,ハザードマップ策定の際には,マグマ噴火時の融雪型火山泥流を想定したシミュレーションによる,到達時間予測や分布範囲予測が検討されてきた.しかしながら,冠雪火山で発生する火山-雪氷複合現象は,高温のマグマに起因する融雪型火山泥流に限らない.噴火と同時に積雪を巻き込んで発生するvolcanic mixed avalanche(Pierson, 1994)や,マグマを伴わない水蒸気噴火であってもice-slurry lahar(Kilgour et al., 2010)のような雪・水・火山土砂の混合流が発生した例も知られており,噴火・融雪・降雨などの泥流発生起因および発生時期(非積雪期・積雪期・融雪期)によっても,起こりうる複合的現象とその災害は変容する.そのため,噴火推移や気象条件,積雪状態が異なる複数のシナリオを考慮し,火山泥流のハザードシミュレーションを行い,災害リスク評価を行う必要がある.
2014年9月に発生した御嶽火山の水蒸気噴火後,同年10月5日に台風による降雨のため火山泥流が発生し,南麓斜面の赤川・濁川を土石流となって流下した.この土石流はマトリクス中の粘土含有量が極めて高く(10-20wt%),粘着性土石流と判断できる.これは,母材となった初性的な火山噴出物が粘土分を多く含む(>30wt%)ことに起因していると考えられる.さらにその後,融雪期の2015年4月20日に,日本海低気圧によりもたらされた降雨により融雪が促進され(rain-on-snow現象:ROS),降雨+融雪により降り始めから13時間の連続雨量換算で332mmが供給された時点で,火山泥流が発生した.この際,上流域では侵食的な流れであり,下流ではhyperconcentrated flowの状態であったことが,気象・積雪観測と河川の流況調査および堆積物の解析から明らかとなった(片岡ほか,2014雪氷研究大会講演要旨).
草津白根(本白根)火山は2018年1月23日午前10時頃に突発的に噴火した.同火山では,今後の噴火の推移や積雪・降雨・融雪などの気象状況により,火山泥流や雪崩発生等の懸念があることから,噴出物の物性解析や積雪水量調査,気象観測などを行う必要がある.ロープウェイのゴンドラ内部に堆積した火山噴出物および外部に付着した火山灰は,armored lapilli状の粒子外側に泥分が吸着した,あるいは複数の粒子が凝集したような産状であった.堆積物は白色変質岩片や変質した長石が多く見られ,微細な黄鉄鉱が含まれる.まれにガラス質岩片が認められる.噴出物全体の化学組成では硫黄含有量が約9wt%であった.粒径2mm以下の粒子に限るとそれに含まれる泥サイズの粒子(0.063mm以下)は45-50wt%であり,細粒分に富む性質があるが,今後,粘土鉱物の種類や粘土含有量を調べることで,発生しうる泥流の粘性の検討を行う.また,積雪水量調査(2018年1月末の時点)では積雪水量の標高依存性を確認し,標高約2000mにおいて約450mm雨量に相当する積雪があった.このことは,この積雪が何らかの理由で瞬時に融けると,同等の雨量が高標高地点にもたらされることを意味している.御嶽火山で観測された融雪期におけるROS型火山泥流発生の可能性も視野に入れ,気象・積雪観測と下流での水文観測を行い,その結果を報告する予定である.
2014年9月に発生した御嶽火山の水蒸気噴火後,同年10月5日に台風による降雨のため火山泥流が発生し,南麓斜面の赤川・濁川を土石流となって流下した.この土石流はマトリクス中の粘土含有量が極めて高く(10-20wt%),粘着性土石流と判断できる.これは,母材となった初性的な火山噴出物が粘土分を多く含む(>30wt%)ことに起因していると考えられる.さらにその後,融雪期の2015年4月20日に,日本海低気圧によりもたらされた降雨により融雪が促進され(rain-on-snow現象:ROS),降雨+融雪により降り始めから13時間の連続雨量換算で332mmが供給された時点で,火山泥流が発生した.この際,上流域では侵食的な流れであり,下流ではhyperconcentrated flowの状態であったことが,気象・積雪観測と河川の流況調査および堆積物の解析から明らかとなった(片岡ほか,2014雪氷研究大会講演要旨).
草津白根(本白根)火山は2018年1月23日午前10時頃に突発的に噴火した.同火山では,今後の噴火の推移や積雪・降雨・融雪などの気象状況により,火山泥流や雪崩発生等の懸念があることから,噴出物の物性解析や積雪水量調査,気象観測などを行う必要がある.ロープウェイのゴンドラ内部に堆積した火山噴出物および外部に付着した火山灰は,armored lapilli状の粒子外側に泥分が吸着した,あるいは複数の粒子が凝集したような産状であった.堆積物は白色変質岩片や変質した長石が多く見られ,微細な黄鉄鉱が含まれる.まれにガラス質岩片が認められる.噴出物全体の化学組成では硫黄含有量が約9wt%であった.粒径2mm以下の粒子に限るとそれに含まれる泥サイズの粒子(0.063mm以下)は45-50wt%であり,細粒分に富む性質があるが,今後,粘土鉱物の種類や粘土含有量を調べることで,発生しうる泥流の粘性の検討を行う.また,積雪水量調査(2018年1月末の時点)では積雪水量の標高依存性を確認し,標高約2000mにおいて約450mm雨量に相当する積雪があった.このことは,この積雪が何らかの理由で瞬時に融けると,同等の雨量が高標高地点にもたらされることを意味している.御嶽火山で観測された融雪期におけるROS型火山泥流発生の可能性も視野に入れ,気象・積雪観測と下流での水文観測を行い,その結果を報告する予定である.