[SVC41-P22] 御嶽山2014年噴火後の噴気放水率推定
キーワード:水蒸気噴火、地盤変動、熱水系、合成開口レーダー
長野-岐阜県境に位置する御嶽山では、2014年の水蒸気噴気以降、山体浅部を起源とする収縮性地盤変動がSAR観測により検出されている。この地盤変動に伴い、噴火直後から始まった噴気放出も継続しており、この収縮が既存の熱水溜まりからの放水過程である可能性が示唆される。2014年噴火では、収縮源の深さ(火口直下500m)よりも深部において火山性地震の震源(Kato et al. 2015)や水準測量により深部収縮源(Murase et al. 2015)が推定されている。そのため、火口から放出される噴気のソースは、噴火後の浅部収縮源だけではない可能性がある。本研究では、噴火直後から継続する浅部地盤変動と噴気活動の量的関係を調べることを目的とし、噴気として放出される水の放出率(以後、噴気放水率とよぶ)を推定した。
解析においては、噴気画像から噴気高度と流速を読み取り、噴気の放熱率を推定するplume-rise法(鍵山 1978)を用いた。得られた放熱率を水の凝結潜熱で割ることで噴気放水率に換算した。画像データは、噴火口を直視できる滝越カメラの画像(提供:気象庁)を用いた。このカメラ画像は、2014/12/01から2017/03/31までの08:55-09:05および14:55-15:05において10秒サンプリングで保存されたものである。
解析の結果、噴気放水率は2014年12月からの2年3ヶ月間で指数関数的に減衰していることがわかった。2015年6月以降は一定値(100 kg/sec)を保っているように見える。噴火直後2ヶ月間における放水量(約400万トン)とあわせると、2014/09/28-2017/3/31における積算の放水量は約1200万トンである。これは九重山1995年噴火後3年間における放水量(1800万トン)と同程度である。
浅部収縮源が放水により収縮していると仮定し、収縮体積(dV)から期待される放水量(Mdef)と実際の放水量を比較すると、Mdefのほうが少なくとも1桁大きかった。なお、収縮体積を質量変化量へ換算する際には、Segall(2010)で提案された式:Mdef=D dV(1+Bf/Bc)を用いた(D:気液2相水の平均密度、Bf:気液2相水の平均圧縮率、Bc:地盤変動ソースの圧縮率)。この原因としては、(1)収縮に寄与した水の山体内への拡散、(2)収縮源付近の気液共存領域の不均質な分布、(3)Bcのモデル依存性などが考えられる。今後は、数値モデルを用いて熱水溜まりの減圧過程を再現することで、これらの要因が質量バランスの推定に与える影響を評価する必要があるだろう。
謝辞:本研究では、気象庁より提供された、滝越カメラの噴気画像を使用しました。ここに記して感謝を申し上げます。
解析においては、噴気画像から噴気高度と流速を読み取り、噴気の放熱率を推定するplume-rise法(鍵山 1978)を用いた。得られた放熱率を水の凝結潜熱で割ることで噴気放水率に換算した。画像データは、噴火口を直視できる滝越カメラの画像(提供:気象庁)を用いた。このカメラ画像は、2014/12/01から2017/03/31までの08:55-09:05および14:55-15:05において10秒サンプリングで保存されたものである。
解析の結果、噴気放水率は2014年12月からの2年3ヶ月間で指数関数的に減衰していることがわかった。2015年6月以降は一定値(100 kg/sec)を保っているように見える。噴火直後2ヶ月間における放水量(約400万トン)とあわせると、2014/09/28-2017/3/31における積算の放水量は約1200万トンである。これは九重山1995年噴火後3年間における放水量(1800万トン)と同程度である。
浅部収縮源が放水により収縮していると仮定し、収縮体積(dV)から期待される放水量(Mdef)と実際の放水量を比較すると、Mdefのほうが少なくとも1桁大きかった。なお、収縮体積を質量変化量へ換算する際には、Segall(2010)で提案された式:Mdef=D dV(1+Bf/Bc)を用いた(D:気液2相水の平均密度、Bf:気液2相水の平均圧縮率、Bc:地盤変動ソースの圧縮率)。この原因としては、(1)収縮に寄与した水の山体内への拡散、(2)収縮源付近の気液共存領域の不均質な分布、(3)Bcのモデル依存性などが考えられる。今後は、数値モデルを用いて熱水溜まりの減圧過程を再現することで、これらの要因が質量バランスの推定に与える影響を評価する必要があるだろう。
謝辞:本研究では、気象庁より提供された、滝越カメラの噴気画像を使用しました。ここに記して感謝を申し上げます。