日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC41] 活動的火山

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、青木 陽介(東京大学地震研究所、共同)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、大倉 敬宏(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC41-P32] 伊豆諸島テフラのデータベース化を目指して―新島大三山地点の事例

*青木 かおり2小林  淳2西澤 文勝2鈴木 毅彦1,2 (1.首都大学東京都市環境学部、2.首都大学東京火山災害研究センター)

東京都は東京都区部・多摩地域・島嶼部の三地域からなり、島嶼部には25,695人が住んでいる(平成30年1月1日現在)。島嶼部をつくる伊豆・小笠原諸島は一部地域を除いて火山活動によって形成された火山島からなる。島嶼部に住み経済活動を営む人々にとって、当該地域における火山活動は脅威である。現在、我々は島嶼部のハザードマップ作成や防災計画の策定に必要な情報を集約するために、それぞれの火山についての活動史や、噴火の様式や規模、噴出物の分布範囲の解明と、島嶼部の高精度なテフラ編年の確立をめざして研究に取り組んでいる(小林ほか、2018:西澤ほか、2018:伊藤ほか、2018:いずれも本大会)。

伊豆・小笠原諸島は、伊豆半島南東沖の相模トラフから南につづく小笠原海溝を東にみて並走する小笠原海嶺から小笠原トラフを挟み、さらに西側に七島・硫黄島海嶺、西七島海嶺、四国海盆へとつづく、本州にも匹敵する長さ約1100km、幅300km~400kmにおよぶ島弧である。もっとも活動的な火山列が存在するのは七島・硫黄島海嶺で、最北に位置する伊豆大島は東京都庁から南に110km、南端の南硫黄島は1281kmに位置する。西七島海嶺の北部は雁行状に配列する海山が顕著であり、最北かつ最大の火山が配列する山脈が銭洲海嶺と呼ばれる。次に、伊豆諸島の主な島の位置関係について簡単にまとめると、以下のとおりである。銭洲海嶺の東から南西方向に伊豆大島、新島、神津島が位置する。また、伊豆大島から25km南西に利島、72km南に三宅島、96km南に御蔵島、179km南に八丈島が位置する。伊豆大島、利島、新島、神津島の4島は半径60km圏内に位置し、やや南方の三宅島と御蔵島を含めると6島が半径100km圏内に位置している。それぞれの島から規模の大きな噴火によってもたらされたテフラや、本州や九州の火山からもたらされた広域テフラは海を渡って複数の島に堆積し、それらが島間の高精度なテフラ編年と火山噴火史を構築する上で重要な鍵層となることは、杉原ほか(2005)や齋藤ほか(2006)などで報告されてきた。島嶼部でのテフラ研究は、陸上のように各テフラ層の分布範囲や層厚を丹念な踏査で追跡することは困難であることから、基本的に発見した地点ごとに各テフラの岩石学的特性と化学的特性の情報を集積して、その理化学的なデータに基づいて対比することになる。本研究では、伊豆諸島の島間のテフラ編年をさらに発展させるために、各島での調査結果から得られたテフラに関する岩石学的特性と化学的特性のデータベース化を進めつつある。また、島嶼部火山起源のテフラは周辺の深海底にも堆積していると考えられることから、これらのデータベースの情報は、今後周辺海域の深海底堆積物中のテフラの対比や同定に取り組む際の基本情報と考えられる。本発表では、研究経過の一部として新島大三山地区でのテフラ分析の結果について報告する。
新島本村集落の南にある大三山南西斜面では、富士見峠テフラ群を含む新島火山起源テフラ、神津島火山起源テフラのほか、外来の玄武岩質テフラ等の薄層を含め、少なくとも17の噴火イベントによる堆積物を視認できる(小林ほか、2018)。これらの試料について、水洗、風乾後に250μm、125μm、63μmサイズで篩い、実体顕微鏡による観察を行い、63-125μmサイズの試料については火山ガラスの屈折率の測定、およびEDS(エネルギー分散型エックス線分析)で火山ガラスの主元素組成分析を行った。また、視認できるテフラ層間のローム層についても水洗して残渣を観察したところ、AT、K-Ah起源と推定される火山ガラスを検出した。本地点は、約3万年以上前からの噴火堆積物がほぼ連続的に露出しており、同地域におけるテフラ編年のデータベースを構築する上で有効な情報を提供できると考えられる。