日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC42] 火山の熱水系

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)

[SVC42-P02] 御嶽山の2014年噴火口と1979年噴火口のガス成分比

*高木 朗充1谷口 無我1北川 隆洋2 (1.気象研究所火山研究部、2.気象庁火山課)

キーワード:御嶽山、火山ガス、多成分火山ガス装置

気象庁では多成分の火山ガス(二酸化炭素,水蒸気,水素,硫化水素,二酸化硫黄)濃度を監視するための装置を,2015~2016年に4箇所の火山の火口付近に設置した(高木・他,2015).御嶽山では2016年9月に山頂から南方約400mの地点(八丁ダルミ)に設置された.この場所は,2014年に噴火した火口のうち最も近い火口から北東約500mに位置する.
 ここではこれまでに水素成分と二酸化硫黄成分は検出限界以下であった.観測されたガス成分のうち,二酸化炭素と硫化水素の比(CO2/H2S)を見ると,レンジが5~25と幅広い.御嶽山の観測結果に限らず,火山ガス活動以外の測定誤差要因が含まれるため, CO2/H2Sにばらつきが見られるが,5~25の幅は広い.また, CO2/H2Sは17以下と17以上に分離しているようにも見えた.
 そこで,これらの観測結果は,異なるガス組成比をもつ複数の火口からの火山ガスを測定しているものであるという仮説を立て,2017年9月に火口の現地調査を実施した.火山ガス観測装置の設置点の南西方向には1979年噴火により,南東-北西方向に火口列が形成された.そのうち,観測点西方約300mの79-7火口では現在でも弱い噴気が噴出している.この79-7火口と,観測点から南西約500mの2014年火口(王滝山頂下火口)において,噴気を観測し火山ガスを採取した.
 2014年噴火の王滝山頂下火口は数カ所の噴気孔からなり,主噴気孔は直径約3mであった.白色の噴煙が轟音とともに噴出し,50m程の高さまで上がっていた.一方,1979年噴火の79-7火口は1箇所の噴気孔から,音もなく弱い噴気が1m程度まで上がっていた.両者の噴気温度はともに90.1度で同じであった.現地で採取した火山ガスを検知管法で測定し CO2/H2Sを計算したところ,2014年火口では20,1979年火口では5.6であった.また,1979年火口の凝縮水はわずかに白濁し,SO2の存在が疑われた.
 以上から,2014年火口の火山ガスの組成比は1979年火口と明らかに異なり,二酸化炭素が相対的に多いことを示した.1979年火口のこれまでの火山ガス組成の測定では,CO2/(H2S+SO2) が小坂(1983)が4.2~1.8(1979~1982年),大場(2015)が4.9(1992年)と報告している.今回の1979年火口の値はこれらと整合している.2014年噴火による火山ガスを生成する熱水系は,1979年とは異なっていた可能性がある.
 また,多成分火山ガス観測装置は,異なる組成比の火山ガスをモニタリングしていた可能性がある.CO2/H2Sのレンジが5~25と幅広く記録されていた理由は,風向きによって2014年火口の火山ガスとそれ以外の火山ガス成分を,あるいはその混合ガスを記録していたからなのかもしれない.
 今後は採取して持ち帰ったガス試料を精密分析する予定である.