[SVC42-P03] 高密度電気探査と水同位体比測定による草津白根火山北側噴気地帯の熱水系の考察
キーワード:熱水系、電気探査、同位体比
草津白根火山は、群馬県北西部に位置する安山岩~デイサイト質の第四紀活火山である。50~60万年前から活動を始め、休止期を挟みながら噴火を繰り返してきた。現在の活動は約16000年前の平兵衛池溶岩の噴出から始まり(早川・由井, 1989)、近年は湯釜周辺での水蒸気爆発が主な活動となっている(気象庁, 2013)。湯釜の北東山麓には北側噴気と呼ばれる噴気地帯が広がっており、2014年の活動活発化の際には温度上昇が見られるなど、火山活動と深く関わっている(気象庁, 2014; 2015)。本研究ではこの北側噴気地帯において、第4回草津白根火山集中総合観測で橋本・他(2004)が行ったのとほぼ同一の3本の測線で高密度電気探査を行い、地下の比抵抗構造を明らかにした。また、北側噴気地帯に湧出する温泉水、湯釜、水釜の湖水を採取し、水同位体比の測定を行った。3本の電気探査測線のうち、南西側を測線1(全長490m)、北東側を測線3(全長550m)、これらに斜交するものを測線2(全長510m)とし、それぞれ電極間隔10m、ウェンナー電極配列およびエルトラン電極配列を用いて測定を行った。解析には佐々木(1981)のプログラムを使用し、得られた結果は、宇都・他(1983)の地質図と比較して解釈を与え、橋本・他(2004)の結果と比較して考察を行った。その結果、噴気地帯直下の低比抵抗帯は熱水によって変質した岩石、または温泉などの流体であると考えられた。高比抵抗帯は香草溶岩および白根溶岩であると考えた。これらの結果は、50mより浅い部分において橋本・他(2004)の結果と整合的であり、2014年の活動によって地下構造は変化していないものと考えられた。水同位体比の結果はOhba et al.(2000)の熱水系モデルと整合的であったが、湯釜湖水との関係など解決すべき問題が残った。今回の観測では、深部構造に対する質の良いデータが得られず、浅部の構造の解釈しかできなかった。今後はより深部、より広範囲の地下構造を推定するために、より長い測線での電気探査や、AMT観測を行う必要がある。また、水同位体比の測定結果を解釈するため、温度測定やCl濃度などの成分分析を行う必要がある。