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[SVC43-02] 溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型による富士山・溶岩流降伏値の推定
キーワード:富士山、溶岩流、降伏値、溶岩チューブ洞窟、溶岩樹型
[はじめに]
富士山には溶岩流ごとに多くの溶岩チューブ洞窟や溶岩樹型が存在する。須山胎内、雁の穴溶岩流には溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型が併存し、高所にある須走口I溶岩流には溶岩チューブ洞窟だけ存在し、鷹丸尾、東臼塚南、剣丸尾I、剣丸尾II溶岩流には溶岩樹型のみが存在する。これら溶岩流の溶岩チューブ洞窟の空洞高さと溶岩樹型の深さから富士山・溶岩流の降伏値を推定・比較した。またその降伏値の差異から富士山・溶岩流の形態についても言及した。
[検討モデル]
検討モデルとして、密度ρの溶岩流が降伏値fBのビンガム流体として角度αの傾斜面を重力gで流れる場合を考える。溶岩流の流動臨界(停止)条件はHを溶岩流厚さとするとH=nfB/(ρg sinα)で表される。斜面表面上を自由表面をもって流れる場合はn=1,円管内を流れる場合はn=4である1)。ここでは、溶岩チューブ洞窟ではn=4の円管内流れとして(Fig.1参照)、樹型の深さ(溶岩流の厚さ)ではn=1の自由表面流として(Fig.2参照)、溶岩降伏値を求めた。
[溶岩チューブ洞窟による降伏値の推定]
溶岩チューブ洞窟空洞高さをHcとすると、溶岩降伏値はfBc= Hc(ρg sinα)/4となる。須山胎内洞窟2)、雁の穴の流れ穴3,4)および須走胎内洞窟5)で求めたものをTable.1に示す。溶岩降伏値は0.8x103~3.2x103N/m2の範囲の比較的低い値を示す。
[溶岩流厚さ(樹型深さ)による見かけの降伏値の推定]
溶岩樹型から得られた溶岩深さHtから自由表面流の溶岩流停止条件から溶岩降伏値fBt= Ht(ρg sinα)を求めた。傾斜度αは等高線から求めた。須山胎内2)、雁の穴3,4)、鷹丸尾6)、東臼塚南7,8)、剣丸尾I9,10)、剣丸尾II9)溶岩流で求めた結果をTable.1に示す。溶岩深さから求めた降伏値には溶岩チューブ洞窟空洞高さから求めた溶岩降伏値(真の降伏値)を大幅に上回る箇所があることが分かる(最大で剣丸尾IIのfB=10.1x103N/m2)。これにより溶岩流は溶岩膨張や溶岩累積を起こし厚みを増し大きな見かけの降伏値を示していると考えられる。
[まとめ]
(1)溶岩流厚さ(樹型の深さ)から得られる降伏値は見かけの降伏値であり、多かれ少なかれ溶岩流は溶岩膨張や溶岩累積を起こしていると考えられる。(2)溶岩流の厚さからより真に近い降伏値を推定するには溶岩流最先端部の舌(Toe)あるいはローブ(Lobe)の厚さから求められるべきと考えられる。(3)真の溶岩降伏値は溶岩チューブ洞窟の空洞高さから得られると考えられる。(4)溶岩流が溶岩膨張を起こし、単純流の4倍以上の厚さになって表面が固化したときに溶岩チューブ洞窟は形成され得ると考えられる。
参考文献:
1)G.Hulme(1974):Geophys.J.R.Astr.Soc.vol39,p361
2)本多力他(2017):溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型による富士山・須山胎内溶岩流の検討,火山学会講演予稿集B3-06
3)石原初太郎(1929):史跡名勝天然記念物調査報告第四、山梨県,p96
4)本多力他(2014):富士山麓・雁の穴溶岩洞窟とその周りの樹型群から得られる知見,日本火山学会講演予稿集p166
5)本多力(2000):海抜2630m富士山須走胎内(洞窟)の形成について、日本洞窟学会第26回大会苅田町大会p64
6)小川孝徳 監修(1997):山梨県富士山北麓柏原溶岩樹型群観察報告書,日本洞窟学会火山洞窟学部, 富士山火山洞窟学研究会 編集,サカエプリント社
7)小川賢之輔(1986):「富士市域の地質及び地形」,富士市の自然:富士市域自然調査報告書.富士市
8)本多力(2002):富士山東臼塚溶岩流の溶岩樹型の特徴と得られる知見(V033-006) 地球惑星科学関連学会合同大会
9)山梨県天然記念物緊急調査委員会,溶岩洞穴・樹型等調査班,小川孝徳他:山梨県天然記念物緊急調査報告書(1996),山梨県教育委員会,p182-344
10)本多力他(2017):富士山・剣丸尾第一溶岩流内の船津胎内樹型群から得られる知見,地球惑星科学連合2017年大会SVC50-P02
富士山には溶岩流ごとに多くの溶岩チューブ洞窟や溶岩樹型が存在する。須山胎内、雁の穴溶岩流には溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型が併存し、高所にある須走口I溶岩流には溶岩チューブ洞窟だけ存在し、鷹丸尾、東臼塚南、剣丸尾I、剣丸尾II溶岩流には溶岩樹型のみが存在する。これら溶岩流の溶岩チューブ洞窟の空洞高さと溶岩樹型の深さから富士山・溶岩流の降伏値を推定・比較した。またその降伏値の差異から富士山・溶岩流の形態についても言及した。
[検討モデル]
検討モデルとして、密度ρの溶岩流が降伏値fBのビンガム流体として角度αの傾斜面を重力gで流れる場合を考える。溶岩流の流動臨界(停止)条件はHを溶岩流厚さとするとH=nfB/(ρg sinα)で表される。斜面表面上を自由表面をもって流れる場合はn=1,円管内を流れる場合はn=4である1)。ここでは、溶岩チューブ洞窟ではn=4の円管内流れとして(Fig.1参照)、樹型の深さ(溶岩流の厚さ)ではn=1の自由表面流として(Fig.2参照)、溶岩降伏値を求めた。
[溶岩チューブ洞窟による降伏値の推定]
溶岩チューブ洞窟空洞高さをHcとすると、溶岩降伏値はfBc= Hc(ρg sinα)/4となる。須山胎内洞窟2)、雁の穴の流れ穴3,4)および須走胎内洞窟5)で求めたものをTable.1に示す。溶岩降伏値は0.8x103~3.2x103N/m2の範囲の比較的低い値を示す。
[溶岩流厚さ(樹型深さ)による見かけの降伏値の推定]
溶岩樹型から得られた溶岩深さHtから自由表面流の溶岩流停止条件から溶岩降伏値fBt= Ht(ρg sinα)を求めた。傾斜度αは等高線から求めた。須山胎内2)、雁の穴3,4)、鷹丸尾6)、東臼塚南7,8)、剣丸尾I9,10)、剣丸尾II9)溶岩流で求めた結果をTable.1に示す。溶岩深さから求めた降伏値には溶岩チューブ洞窟空洞高さから求めた溶岩降伏値(真の降伏値)を大幅に上回る箇所があることが分かる(最大で剣丸尾IIのfB=10.1x103N/m2)。これにより溶岩流は溶岩膨張や溶岩累積を起こし厚みを増し大きな見かけの降伏値を示していると考えられる。
[まとめ]
(1)溶岩流厚さ(樹型の深さ)から得られる降伏値は見かけの降伏値であり、多かれ少なかれ溶岩流は溶岩膨張や溶岩累積を起こしていると考えられる。(2)溶岩流の厚さからより真に近い降伏値を推定するには溶岩流最先端部の舌(Toe)あるいはローブ(Lobe)の厚さから求められるべきと考えられる。(3)真の溶岩降伏値は溶岩チューブ洞窟の空洞高さから得られると考えられる。(4)溶岩流が溶岩膨張を起こし、単純流の4倍以上の厚さになって表面が固化したときに溶岩チューブ洞窟は形成され得ると考えられる。
参考文献:
1)G.Hulme(1974):Geophys.J.R.Astr.Soc.vol39,p361
2)本多力他(2017):溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型による富士山・須山胎内溶岩流の検討,火山学会講演予稿集B3-06
3)石原初太郎(1929):史跡名勝天然記念物調査報告第四、山梨県,p96
4)本多力他(2014):富士山麓・雁の穴溶岩洞窟とその周りの樹型群から得られる知見,日本火山学会講演予稿集p166
5)本多力(2000):海抜2630m富士山須走胎内(洞窟)の形成について、日本洞窟学会第26回大会苅田町大会p64
6)小川孝徳 監修(1997):山梨県富士山北麓柏原溶岩樹型群観察報告書,日本洞窟学会火山洞窟学部, 富士山火山洞窟学研究会 編集,サカエプリント社
7)小川賢之輔(1986):「富士市域の地質及び地形」,富士市の自然:富士市域自然調査報告書.富士市
8)本多力(2002):富士山東臼塚溶岩流の溶岩樹型の特徴と得られる知見(V033-006) 地球惑星科学関連学会合同大会
9)山梨県天然記念物緊急調査委員会,溶岩洞穴・樹型等調査班,小川孝徳他:山梨県天然記念物緊急調査報告書(1996),山梨県教育委員会,p182-344
10)本多力他(2017):富士山・剣丸尾第一溶岩流内の船津胎内樹型群から得られる知見,地球惑星科学連合2017年大会SVC50-P02