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[SVC43-06] 立野地域に分布する先阿蘇火山岩類の地質と岩石
キーワード:先阿蘇火山岩類、阿蘇火山、平成28年熊本地震
平成28年熊本地震で発生した立野地域の斜面崩壊地から先阿蘇火山岩類を40試料採集し,薄片観察と全岩分析を行った.本地域に分布する先阿蘇火山岩類の産状と岩石学的特徴を報告する.
阿蘇大橋崩落現場および九州電力水力発電貯水池付近の崩壊地,立野病院北西部の連続露頭など6箇所のルートで少なくとも20枚の溶岩のフローユニットを確認した.立野病院北西の崩壊地,層厚250 mのルートでは溶岩のフローユニットが12枚存在し,各フローユニット(厚さ3 ~15 m)は赤色土壌(厚さ1~20 m)を間に挟んでいた.貯水池西側(層厚70 m)のルートでは層厚は少なくとも50 mの凝灰角礫岩(礫は火山岩塊,マトリックスは火山灰質土壌),その上部の尾根面を形成する溶岩のフローユニットを認めた.阿蘇大橋西の崩壊地では溶岩のフローユニットを6枚とその間に挟まる土壌がみられた.
分析した溶岩試料はすべて安山岩組成で,ほとんどが斑晶鉱物組合せとしてかんらん石,普通角閃石のいずれか,もしくはその両方を持つことが特徴である.それ以外の斑晶として単斜輝石,斜方輝石,斜長石,不透明鉱物を含む.今回分析した安山岩主体の先阿蘇火山岩類は,デイサイトの軽石が主体であるカルデラ形成期の噴出物と対照的である.また,K2Oに富み両輝石を含む粗面安山岩を発見した.それ以外の試料は全て非アルカリ岩で,FeO*/MgOがほとんど変化せず,シリカが増加するカルクアルカリ系列の分化トレンドを示す.この点においてもソレアイト系列の分化トレンドを取るカルデラ形成期の噴出物とは対照的である.
立野病院北西部250 mの溶岩の連続露頭では,下位のL4-10ユニットから上位L4-1ユニットに向けて(L4-4は欠如)シリカ含有量が増減を繰り返す時間変化を示すことが分かった.斑晶組合せはHb→Ol+Hb→Ol+Hb→Ol→Ol→Ol→Ol→Hb→Ol,シリカ含有量(wt.%)は56.1→57.2→56.3→53.6→53.3→57.6→52.6→55.0→53.0である.(Hb=普通角閃石,Ol=かんらん石,全ての試料は単斜輝石・斜方輝石を含む)この組成変化はマフィックマグマからかんらん石・輝石などの結晶分化作用でシリシックマグマが生成するモデルでは説明できない.本来非平衡であるはずのかんらん石と普通角閃石を斑晶組合せにもち,斜長石が清澄なものと汚濁帯をもつものが共存している事実はマグマ混合が起きていた可能性を示唆する.
マグマの化学組成と鉱物組合せに着目すると,安山岩溶岩が卓越する先カルデラ期,デイサイトの火砕流堆積物が主体のカルデラ形成期,玄武岩から流紋岩までの幅広い組成が特徴の後カルデラ期の三者では,マグマ供給系がそれぞれ異なっていたことが推察される.
阿蘇大橋崩落現場および九州電力水力発電貯水池付近の崩壊地,立野病院北西部の連続露頭など6箇所のルートで少なくとも20枚の溶岩のフローユニットを確認した.立野病院北西の崩壊地,層厚250 mのルートでは溶岩のフローユニットが12枚存在し,各フローユニット(厚さ3 ~15 m)は赤色土壌(厚さ1~20 m)を間に挟んでいた.貯水池西側(層厚70 m)のルートでは層厚は少なくとも50 mの凝灰角礫岩(礫は火山岩塊,マトリックスは火山灰質土壌),その上部の尾根面を形成する溶岩のフローユニットを認めた.阿蘇大橋西の崩壊地では溶岩のフローユニットを6枚とその間に挟まる土壌がみられた.
分析した溶岩試料はすべて安山岩組成で,ほとんどが斑晶鉱物組合せとしてかんらん石,普通角閃石のいずれか,もしくはその両方を持つことが特徴である.それ以外の斑晶として単斜輝石,斜方輝石,斜長石,不透明鉱物を含む.今回分析した安山岩主体の先阿蘇火山岩類は,デイサイトの軽石が主体であるカルデラ形成期の噴出物と対照的である.また,K2Oに富み両輝石を含む粗面安山岩を発見した.それ以外の試料は全て非アルカリ岩で,FeO*/MgOがほとんど変化せず,シリカが増加するカルクアルカリ系列の分化トレンドを示す.この点においてもソレアイト系列の分化トレンドを取るカルデラ形成期の噴出物とは対照的である.
立野病院北西部250 mの溶岩の連続露頭では,下位のL4-10ユニットから上位L4-1ユニットに向けて(L4-4は欠如)シリカ含有量が増減を繰り返す時間変化を示すことが分かった.斑晶組合せはHb→Ol+Hb→Ol+Hb→Ol→Ol→Ol→Ol→Hb→Ol,シリカ含有量(wt.%)は56.1→57.2→56.3→53.6→53.3→57.6→52.6→55.0→53.0である.(Hb=普通角閃石,Ol=かんらん石,全ての試料は単斜輝石・斜方輝石を含む)この組成変化はマフィックマグマからかんらん石・輝石などの結晶分化作用でシリシックマグマが生成するモデルでは説明できない.本来非平衡であるはずのかんらん石と普通角閃石を斑晶組合せにもち,斜長石が清澄なものと汚濁帯をもつものが共存している事実はマグマ混合が起きていた可能性を示唆する.
マグマの化学組成と鉱物組合せに着目すると,安山岩溶岩が卓越する先カルデラ期,デイサイトの火砕流堆積物が主体のカルデラ形成期,玄武岩から流紋岩までの幅広い組成が特徴の後カルデラ期の三者では,マグマ供給系がそれぞれ異なっていたことが推察される.