日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC44] 島弧の火成活動と火山ダイナミクス

2018年5月24日(木) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、中村 仁美(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、入山 宙(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:中村 仁美(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、入山 宙(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

10:45 〜 11:00

[SVC44-07] カムチャツカ北部、北部Sredinny Rangeにおける火成活動

*西澤 達治1中村 仁美1,2,3Churikova Tatiana4Gordeychik Boris5石塚 治6,7岩森 光1,2 (1.東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻、2.海洋研究開発機構地球内部物質循環研究分野、3.千葉工業大学次世代海洋資源研究センター、4.ロシア科学アカデミー極東支部火山地震研究所、5.ロシア科学アカデミー実験鉱物研究所、6.産業総合研究所活断層火山研究部門、7.海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター)

キーワード:カムチャツカ、太平洋プレート、スラブエッジ、沈み込み帯、島弧マグマ

カムチャツカ半島は千島弧の北方延長上に位置し,太平洋プレートの北西端の沈み込みに対応する世界最大級の火山弧の一つである.カムチャツカ海溝からアリューシャン海溝への接合点には,太平洋プレート,北米プレート,オホーツクプレートから構成される海溝‐トランスフォーム‐トランスフォーム型の三重会合点が形成されている.太平洋プレートの北端において,マントルウェッジが北方向に開いている(Yogodzinski et al., 2001; Portnyagin and Manea, 2008).また,天皇海山列が三重会合点付近からカムチャツカ北部の下へ沈み込んでおり,これは沈み込む太平洋プレートの変形を引き起こし,北緯55°付近においてスラブの沈み込み角度を55°から35°へと浅くしている(Gorbatov et al., 1997).
カムチャツカ弧は島弧横断方向の幅広い火山帯を特徴とし,3本の火山列,Eastern Volcanic Front(EVF),Central Kamchatka Depression(CKD),Sredinny Range(SR)から構成される.火山フロントは千島弧から海溝軸に沿ってEVFへと連なり,北緯55°付近でスラブ深度の浅化に伴い北側のCKDにあるKlyuchevskoy Volcanic Group(KVG)へとスラブの100–180 kmの等深線沿って折れ曲がる.この火山フロントのオフセットはスラブの沈み込み角度の浅化と対応する.KVGは世界で最も活発で最大級の活火山群である.一方,SRは背弧の火山帯を構成し,僅かに存在する活火山は南部SR(S-SR)のみに分布する(Pevzner, 2006).北部SR(N-SR)は,太平洋スラブエッジと一致するSRの最北に位置する活火山から北側に100 km離れている.しかし,我々はN-SRにおいて多くの若い火山地形や火山噴出物を発見した.N-SRにおける火成活動を特徴づける為に我々はN-SR溶岩を対象に岩石記載と化学組成分析を行った.
次のようなN-SRの火成活動の特徴を発見した.火成活動は少なくとも前期鮮新世から始まり完新世まで続いている.新第三紀においては溶岩台地が主要であった一方、第四紀においては単成火山や成層火山が主要であり,また両年代において噴出量,岩石組織,鉱物含有量,全岩主要・微量元素組成が系統的に異なる.N-SR溶岩はほぼ同一の温度‐圧力条件下における水に飽和したマントル溶融によってもたらされたと推定される.ソースマントルに供給された流体は,沈み込む太平洋プレート又は北部カムチャツカの下に沈み込んだベーリングプレートおよび又はforearc sliversから供給されたと考えられる.その島弧溶岩はKVGの溶岩に比べHFSE(~18 ppm Nb, and ~1.2 ppm Ta)に濃集しS-SRの溶岩と同程度である(Volynets et al., 2010),その大半は深部における脱水によりもたらされた可能性がある.これらの結果は,スラブ起源流体がスラブエッジ以北に位置するN-SRの島弧火成活動においても重要な役割を果たしていることを示唆する.