日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

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[U-06] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA(CH-A) (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:奥村 晃史(広島大学大学院文学研究科)、川畑 大作(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:川畑 大作宇根 寛

15:30 〜 16:00

[U06-07] 日本学術会議を要とした防災学術連携体の活動ー56学会の垣根を超えた連携と活動ー

★招待講演

*和田 章1米田 雅子2,3 (1.東京工業大学、2.慶応義塾大学、3.日本学術会議会員)

1.はじめに

 日本および世界の防災減災が喫緊の課題となっている。大災害の発生は地殻の動き・気候変動・社会の変化などの結果として起こる悲惨なものあり、長期的・継続的に構え、取り組む必要がある。防災減災・災害復興の推進には多くの研究分野が関係し、専門分野の枠をこえて、理学工学だけでなく人文社会科学、生命科学も含めて総合的かつ持続的に取り組む必要がある。これらの研究は、専門分野ごとに深めるだけでなく、異なる分野との情報共有や平常時の交流を通して活発化させる必要がある。さらに、研究成果が国や地域の防災・減災対策に反映されるように、行政組織との連携を取ることも求められている。



2.分野を超えた隙間のない連携と行動

 大きな自然の猛威ほど発生頻度は小さく、滞りのない準備が難しいだけでなく、社会の行動に科学・技術への過信、自然を無視した驕りが起きやすい。自然災害は尊い人命を奪うだけでなく、完全なように見えていた文明を壊し、社会の動きに大混乱を及ぼす。科学者だけでなく社会は自然への畏怖の念を忘れず、謙虚に災害が起きない社会を作り、備えることが重要である。

 明治以来150年の間に我国の学術分野は細分化を続け、それぞれの分野は真剣に取り組んでいるに違いないと考え、他分野への関心が徐々に薄れ、専門を超えた議論はされ難くなっている。結果として他分野の活動に暗黙の了解が増長し、これらの暗黙の了解と了解の間に、誰も注目しない重要な弱点が残ってしまう。ただし、抜け目のない大きな自然の猛威はこれらの弱点を攻めて、我々の社会に大災害を起こす。

 東日本大震災の惨状を前にして、研究者や技術者がそれぞれの専門の枠の中で議論していたのでは、自然の猛威に対処できず、全体で起こることに想像力を馳せ、専門間の隙間を埋める努力を続け、他分野の研究を知り、研究者が交流し連携することが必要であると、誰もが考えた。垣根を越えて自由に議論することは、研究者間だけでなく、行政・企業などの組織内の上下を超え、複数の企業が関係する大きな仕事では企業の枠を超え、さらに専門分野を超えて隙間なく行われる必要がある。



3.多くの学会の連携活動から防災学術連携体の設立

 1995年に起きた阪神淡路大震災の甚大な災害について、理工学系の学会が合同報告書を纏めたことがきっかけとなり、学会の垣根を越えた活動が始まっていた。東日本大震災の直後(2011年5月)に、日本学術会議の有志とこれらの理工学系の学会をもとに「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会」が設立され、より広い範囲の学会の積極的な参加があり、日本学術会議を要として30学会の学際連携を進めてきた。連続シンポジウムの開催、国際会議への参加、国内外への共同声明の発表などを行ってきた。

 これを発展させ、2016年1月9日に地震災害や津波災害だけでなく、火山の爆発、気象変動が激しくなり多発する集中豪雨、豪雪、結果として起こる崖崩れ、巨大台風による強風などすべての自然災害を対象に、防災減災を進め、より良い災害復興を目指すため、理学・工学・農学から医学・社会学まで広い分野の47の学会の参画を得て「防災学術連携体」が設立された。その後、参加学会は増え平成30年2月の段階で、56の学会が参加している。



4.「日本学術会議 防災減災学術連携委員会」と「防災学術連携体」の活動

 防災学術連携体は日本学術会議に設けられた「防災減災・災害復興に関する学術連携委員会」(委員長:和田 章)と密接に連携して活動してきた。日本学術会議は3年ごとに期が改まるが、2017年10月に24期が始まり、同委員会は「防災減災学術連携委員会」(委員長:米田雅子)に改称し活動が続いている。

 この連携活動としては、(1) 政府の主催する防災推進国民会議議員、(2) 防災推進国民大会への出展、(3) 日本学術会議と共催でシンポジウムの開催、(4) 防災関連の総合ポータルサイトに各学会の行事カレンダー、研究報告などを載せ、平常時から学会間の連携。(5) 大災害等の緊急事態時に動けるように、学会間の緊急の連絡網の整備。(6) 自然災害発生後の関係学会による合同記者会見。(7) 各学会の防災関連の委員会活動のデータベースの構築と適切な研究者の検索機能。

 防災学術連携体は、自然大災害の頻度は低いがいつ起こるかわからず、継続性のある組織作りが最重要である。国内だけでなく海外の学術団体・関係機関と国際交流をすすめ、世界の防災減災にも協力する。