日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 102 (1F)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:高島 久洋(福岡大学)

09:15 〜 09:30

[AAS04-17] 横須賀におけるPandora型太陽直達光分光器による大気NO2カラム濃度決定:TROPOMI衛星観測検証の高度化

*金谷 有剛1高島 久洋2,1野津 雅人3関谷 高志7宮崎 和幸1Eskes Henk4Pinardi Gaia5Santana Diaz Daniel6Müller Moritz6Cede Alexander6 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター、2.福岡大学、3.首都大学東京、4.オランダ王立気象研究所、5.ベルギー宇宙航空研究所、6.LuftBlick、7.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:衛星観測、精度検証、分光計測、大気汚染

大気汚染の鍵物質であるNO2の衛星観測は、1995年以来、NOx発生源の全球分布やその変化に関する重要な情報を提供し、大気化学の理解を増進してきた。最近では2017年に打ちあがったTROPOMI(Sentinel-5P)において水平解像度が7×3.5 kmまで高まる大きな進歩があり、都市内部まで解像した観測情報にも期待が寄せられている。しかしながら対流圏NO2気柱濃度の計測ではTROPOMIの場合でも25-50%に上る過小評価が世界的にみられるなど、基本的な課題が未だ残っている。そのギャップの原因としては、(1)衛星アルゴリズムで用いている高度分布形状が都市部では不適切であること、(2)共存するエアロゾルや地表面アルベドの効果が十分考慮されていないこと、(3)衛星・地上検証観測の視野重なりの不完全さとNO2濃度の不均一さに由来する差などが挙げられるが、同時に、(4)検証の基準としている、太陽散乱光分光に基づくMAX-DOAS型地上計測の不確かさの可能性も残っていた。そこで、これらの原因の特定を目指し、検証点である横須賀において、2018年11月より、NASAが開発したPandora型分光計による太陽直達光分光によるNO2カラム濃度連続計測を導入し、従来のMAX-DOASと複合した検証体制強化を実現した。直達光計測では、高度分布に関する情報は取得できないが、光の到達経路が確実に決まり、気柱量を高精度で決定できる。2018-2019年冬季には、横須賀周辺0.1°以内でのTROPOMI衛星による対流圏NO2カラム濃度観測をMAX-DOASで検証したところ、これまでと同様に約40%の過小評価が見られた。Pandora直達光による計測ではMAX-DOASより24%低い値が得られた。その理由として、MAX-DOASの北東側の視野ではPandoraでの南側の視野と比較して汚染レベルが高く、上述の(3)の効果が無視できないことがわかった。このことは、高解像度衛星TROPOMIの計測で、平均する空間範囲を北東側に10km移したところ、カラム濃度が18%高まることと整合的であった。これらのことから、(3)(4)の効果を定量的に評価することができた。同時に、 (1)(2)の要素が残されたギャップの部分を説明できるかどうか検討することが必要であることがわかった。