日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 102 (1F)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:竹谷 文一(海洋研究開発機構)、持田 陸宏(名古屋大学)

10:45 〜 11:00

[AAS04-22] 冷温帯林における通年観測で採取された植物由来二次有機エアロゾル中に存在する分子マーカーのLC/MS分析

*佐藤 圭1Sathiyamurthi Ramasamy1猪俣 敏1宮崎 雄三2 (1.国立研究開発法人国立環境研究所、2.北海道大学)

キーワード:植物由来揮発性有機化合物、二次有機エアロゾル、有機硫酸エステル、ニトロオキシ有機硫酸エステル、有機態窒素

森林大気エアロゾルの有機態窒素およびダイマー等の生成機構に関する知見を得ることを目的に、通年採取された森林大気エアロゾル中に含まれる分子マーカーをネガティブモードの電子スプレーイオン化液体クロマトグラフ質量分析(ESI-LC/MS)法により分析した。分析には、北海道大学苫小牧研究林で2013年1月~12月に採取された33のエアロゾルサンプルを用いた。分析された分子マーカーは、cis-ピン酸、3-メチル-1,2,3-ブタントリカルボン酸(3-MBTCA)、ESIによりm/z 357に検出されるα-ピネン由来ダイマー(α-ピネンダイマー)、m/z 215に検出されるイソプレン由来有機硫酸エステル(イソプレンOS)、m/z 260に検出されるイソプレン由来ニトロオキシ有機硫酸エステル(イソプレンNOS)であった。フィルターに採取されたエアロゾルサンプルをメタノール中に抽出し、窒素流通下で濃縮後、分析溶媒に溶解して分析試料とし、分析試料をLC/MS分析した(Sato et al., 2007)。α-ピネン由来の酸化生成物であるcis-ピン酸濃度の季節変動には春と秋にピークがあったが、ピノン酸由来の酸化生成物である3-MBTCA濃度の季節変動には夏にピークがあった。以前に同じサンプルのGC/MS分析(Müller et al., 2017)で得られたcis-ピン酸および3-MBTCAの季節変動の結果は今回のLC/MS分析で得られた結果とほぼ同様であった。α-ピネンダイマーの季節変動はcis-ピン酸の季節変動に良く似ており、検出されたダイマーの主要生成プロセスはα-ピネンの大気酸化であることが示唆された。イソプレンエポキシジオール(IEPOX)由来のイソプレンOSおよびイソプレンNOS濃度の季節変動には、それぞれ秋および夏にピークが見られた。イソプレンNOSの季節変動は、以前にGC/MSによって測定されたイソプレン由来二次有機エアロゾルの分子マーカーである2-メチルテトロールの季節変動とよく似ており、大気汚染物質存在下でのイソプレンからの二次有機エアロゾル生成がイソプレンNOSの主要な生成メカニズムであることが示された。



参考文献

Sato, K., Hatakeyama, S., Imamura, T., Secondary organic aerosol formation during the photooxidation of toluene: NO x dependence of chemical composition, J. Phys. Chem. A 111, 9796-9808 (2007).

Müller, A., Miyazaki, Y., Tachibana, E., Kawamura, K., Hiura, T., Evidence of a reduction in cloud condensation nuclei activity of water-soluble aerosols caused by biogenic emissions in a cool-temperate forest, Sci. Rep., 7, 8452 (2017).