日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 102 (1F)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:竹谷 文一(海洋研究開発機構)、持田 陸宏(名古屋大学)

11:30 〜 11:45

[AAS04-25] 大気エアロゾルの粒径分布と吸湿性の呼吸器沈着率への影響に関する事例分析

*王 敏睿1三原 利之2,4梶野 瑞王5川名 華織2,6持田 陸宏1,2,3 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.名古屋大学大学院環境学研究科、3.名古屋大学高等研究院、4.岐阜県工業技術研究所(現在の所属)、5.気象庁気象研究所、6.海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター(現在の所属))

キーワード:エアロゾル、粒径分布、吸湿性、呼吸器沈着

エアロゾルは大気汚染を引き起こす物質のひとつである。呼吸によるエアロゾルの体内への取り込みは、人の健康に悪影響をもたらす。エアロゾルの健康リスクを評価するには、エアロゾルの呼吸器への沈着とそれを影響する要素を解明することが重要となる。

本研究では、2009年及び2010年に名古屋大学東山キャンパスで測定したエアロゾルの粒径別吸湿成長分布データを解析し、肺沈着モデルMPPD(Multiple-Path Particle Dosimetry Model)を用いて、成人男性・鼻呼吸・休息時/軽運動時におけるエアロゾルの粒径/吸湿性別沈着率を計算した。いずれの年の測定期間においても、胸郭内(気管支(tracheobronchial airway)と肺胞(alveolar interstitium)の合算)における沈着率は粒径24.1〜359 nmの範囲内において二峰性分布になり、それぞれ最大値は50.1%/50.0%(軽運動時)であり、全体的に粒径の増大に伴い沈着率が減少する傾向を示した。粒径100 nm以下の微小粒子は基本的に粒子の吸湿性が高いほど気管支・肺胞への沈着率が低くなるが、比較的に大きい粒子(主に粒径200 nm以上)では逆に吸湿性の増大に伴い、沈着率が高くなる傾向が顕著になった。

2009年の観測は10日間連続で行われており、時間帯による沈着率の変化に影響する気象要素を調べるため、気象庁過去天気データベースから該当期間の気象データを解析し、昼間(12時〜18時)と夜間(0時〜6時)で比較を行った。その結果、昼間の相対湿度は降水のあった9月15日11〜17時及び9月22〜23日を除き、基本50%より低かった。昼間のエアロゾル呼吸器沈着量は9月23日を除き、すべて粒径100 nmより小さいかつ疎水性の粒子(吸湿成長率g=1.0〜1.2程度)を極大に持つ分布を示した。また、9月21日のように比較的親水性の粒子(g=1.2〜1.4程度)に山が存在する日もあった。一方、夜間は相対湿度が60%より高く、呼吸器沈着量は疎水性微小粒子と親水性粒子の両方に極大を持つ二峰性分布を示した。なお、9月23日は一日中昼夜問わず相対湿度が75%前後と高く、昼間には6時間程連続に、呼吸器沈着量に親水性の粒子(g=1.4前後)を中心とする一峰性分布が見られた。時間帯による人為起源粒子の排出量や外界湿度が影響する変質の程度が変化することで、体内に取り込む粒子に含まれる吸湿性の異なる粒子の割合が大きく変わり、粒子の呼吸器沈着量に影響する可能性があると思われる。