日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 103 (1F)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)、座長:中島 英彰(国立環境研究所)

15:30 〜 16:00

[AAS04-28] 惑星大気 - 火星・金星 -

★招待講演

*前澤 裕之1 (1.大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)

キーワード:惑星大気、地球型惑星、太陽系、火星、金星、ヘテロダイン分光

近年、系外惑星の探査や原始惑星系円盤などの研究が急加速している。こうした中、系内外の地球型惑星の大気環境やハビタビリティや、中心星の活動が周囲の惑星の大気環境に与える影響について一層の理解を深めていく上で、すでに固有磁場を失っている火星や金星は貴重な研究ターゲットである。

火星ではメタンが検出されており、その発生起源はもとより、消失を促す大気や地表での酸化反応ネットワークの解明に向けた調査が続いている。CO2を主大気とする地球型惑星では、CO2は太陽光によりCOや酸素へと光解離される。火星や金星ではこのCOや酸素の存在量比が少なく、どのように酸化されてCO2に戻っているのか、まだ完全には解明されておらず、これはCO2の安定問題と呼ばれている。地球型惑星の大気環境の変遷の理解のためにも、火星におけるH2O、H2O2、OHなどの時空間変動やO2の高度分布など、酸化剤やその同位体含めた詳細かつ系統的な観測が今後も重要な課題の1つとなっている。

金星については、雲高度付近の高速のスーパーローテションが知られており、さらにその上層では昼夜間対流が存在すると考えられている。しかし、例えば、昼夜間対流は朝面・昼面で単純で同一のパターンでは無いことも近年次第に分かってきており、さらには、最近、あかつき衛星が大規模な大気重力波の影響なども捉え、より複雑なダイナミクスを伴っているようである。こうした輸送環境が、金星のSOx、HOx、COx、塩化物やエアロゾル、硫酸などの物質循環や酸化反応ネットワークをどのように駆動しているかの解明も、今後重要なテーマである。CO2大気を纏う典型的な地球型惑星において、バイオマーカーであるO2やO3がどの程度非生物的に形成されるのかについても、今後、金星や火星は重要な知見を与えてくれるだろう。

本講演では、アタカマ大型ミリ波・サブミリ波干渉計などのヘテロダイン分光観測で探る惑星大気の観測についても触れる予定である。ミリ・サブミリ波は波長が長く、エアロゾル/ダストの影響を受けにくい。また、高い周波数分解能により惑星大気の微量分子の高度分布を導出でき、スペクトルのドップラーシフトから高層大気の速度場を推定することも可能である。さらに、太陽のような背景光源が不要なため昼夜問わず観測が可能である。他波長の地上望遠鏡・探査衛星による観測と合わせて、現在の金星・火星の大気環境の研究について紹介する。