日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] 大気化学

2019年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS04-P17] PM2.5モバイル計測器の性能評価と国道1号線および長崎大学周辺での測定

*鐘ヶ江 健太1山崎 高幸2岡本 渉2松見 豊2中山 智喜1 (1.長崎大学、2.名古屋大学)

キーワード:小型PM2.5センサ、個人曝露量、モバイル測定

PM2.5の人体への短期曝露は、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させる要因であり、PM2.5濃度の上昇により死亡リスクの上昇も懸念されている。そのため、個人単位でのPM2.5の曝露量の把握することが重要である。我々が、パナソニック社とともに共同開発した小型PM2.5センサ[Nakayama et al. 2018]は、個々の光散乱を検出して、粒径区分ごとの粒子数密度を計測することでPM2.5重量濃度を得るものであり、ベータ線吸収法などによる高価で大型のものとは異なり、持ち運び可能なコンパクトなサイズであり、個人曝露量計測に応用できる可能性がある。しかしながら、本小型PM2.5センサは、小型のヒータによる熱対流を用いて、粒子をセンサ内に導入しているため、持ち運んで計測する場合、装置の傾きや揺れにより、センサの感度が変化する可能性がある。
そこで本研究では、本PM2.5センサを実験室内で、傾けたり、揺らしたりした場合に感度がどの程度変化するかを調べた。また、本センサを携帯して屋外で歩行した場合に、静置時に比べて、どれだけ感度が低下するか調べた。これらの結果から、センサの傾きが±10°以内になるように携帯すれば、通常の歩行において、大きな感度変化なくPM2.5の計測が可能であることが分かった。さらに、本センサを携帯して、国道1号線(東京から京都)および長崎市内を歩行し、PM2.5重量濃度の測定を行った。今後、得られたPM2.5の分布状況を、周囲の環境や気象条件、常時監視での測定結果と比較し、PM2.5の局所的な排出源や拡散・輸送過程について調べる予定である。本センサを個人曝露量計測に用いることで、PM2.5の呼吸器や循環器への影響などに関する疫学研究への応用が期待できる。

謝辞
本研究は、パナソニック株式会社エコソリューションズ社の協力を得て実施した。

参考文献
T. Nakayama, Y. Matsumi, K. Kawahito, Y. Watabe, Development and evaluation of a palm-sized optical PM2.5 sensor, Aerosol Sci. Technol., 52, 2-12, doi:10.1080/02786826.2017.1375078 (2018).