日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 成層圏・対流圏過程とその気候への影響

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:河谷 芳雄(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、渡辺 真吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、関谷 高志(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

[AAS05-P11] 2009年11月の南米南端におけるオゾン量低下イベントに関する解析

*秋吉 英治1門脇 正尚2中村 東奈3杉田 考史1廣岡 俊彦4原田 やよい5水野 亮6 (1.国立環境研究所、2.日本原子力研究開発機構、3.富士通エフ・アイ・ピー、4.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、5.気象研究所、6.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:オゾンホール、南米、極渦、ブロッキング、2009年11月、ERA-Interim 再解析データ

2009年11月に南米南端部において、約3週間にわたるオゾン量の低下が続いた。南米では初夏にあたり、紫外線への影響が懸念された。この現象は、9月~10月にかけて最盛期を迎えるオゾンホールの場となっている南極渦が、季節の進行に伴って11月になって不安定になり、南米方面へ変形・移動し、南米上空にとどまりながら崩壊を始めたことが原因である。では、どのようなメカニズムによってこの南極渦の南米方面への変形・移動が起こったのであろうか?また、同様な現象は過去にも起こっていたのであろうか?この2つの疑問を明らかにするため、1979年~2015年の37年間のERA-Interim再解析データおよびOMIオゾン全量データの解析を行った。成層圏で極渦の崩壊が起こり始める、あるいは崩壊直前となる場合が多い11月の、500hPaジオポテンシャルハイトについてブロッキングパターンの診断を行ったところ、ブロッキングパターンが生じた時に対流圏から成層圏への波動伝搬が強化され、それに伴いブロッキングが起こった領域の東の成層圏に南極渦が伸張あるいは移動し、南極周辺の中高緯度域のオゾン量を低下させる場合が多いことがわかった。また、11月におけるブロッキングパターンの出現と南極渦の大規模な伸張・移動との同様な関係は、2009年の他にも5回程度あり、そのうち3回(1994年、1997年、2011年)は南米付近で見られた。しかしながらこれらの年のオゾン量低下の持続期間は2009年ほど長くはなかった。以上の結果から、11月のブロッキングパターンの診断を行うことで、南極渦が崩壊するときの移動・変形の方向(経度)をある程度予想できることが示唆され、それはオゾンホール空気塊のその地域への襲来とそれによってもたらされる紫外線増加の予測に役立つ。対流圏の気象場を診断することで、現在南米で行われている紫外線予測の精度を上げることができるかもしれない。
本研究は地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「南米における大気環境リスク管理システムの開発」(2012~2017年度、代表:水野亮 名古屋大学)によって行われた。