日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC27] 雪氷学

2019年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 303 (3F)

コンビーナ:縫村 崇行(東京電機大学)、石川 守(北海道大学)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、永井 裕人(早稲田大学 教育学部)、座長:永井 裕人(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

09:45 〜 10:00

[ACC27-04] ネパール,ランタン・リルン峰における懸垂氷河の崩落の特徴

渡部 帆南2、*奈良間 千之1森 義孝2河島 克久3 (1.新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム、2.新潟大学大学院自然環境科学研究科、3.新潟大学災害・復興科学研究所)

キーワード:懸垂氷河、崩落、ランタン・リルン峰、ゴルカ地震

ネパールの首都カトマンズから北西に位置するゴルカ郡において,2015年4月25日にM7.8,同年5月12日にカトマンズから北東80kmでM7.3の2回の大規模な地震が発生した.100回ほどの余震を含めたこの一連の地震により,ヒマラヤ高山の雪氷域では雪崩,氷河崩落,雪氷土砂崩落,地すべりを含む土砂崩落など多数の斜面崩壊が生じた.カトマンズの北に位置するランタン谷では,地震により生じた2度の雪氷土砂崩落により「雪氷岩屑なだれ」が生じ,ランタン村は多量の雪氷土砂堆積物に覆われ(1回目:6.81×106m3,2回目:0.84×106m3),350名を超える犠牲者がでた(Kargel et al., 2015; Fujita et al., 2016).雪氷岩屑なだれのトリガーは,山腹斜面上部にある懸垂氷河の崩落や冬季の大量の積雪による雪崩だと考えられている(Fujita et al., 2016; Lacroix, 2016).そこで本研究では,ランタン村を襲ったランタン・リルン峰とランタン・リルンII峰の岩壁にある懸垂氷河を対象に,地震前の衛星画像(GoogleEarthの2015年1月)と,地震後のヘリコプターからの空撮画像(2015年10月,2018年11月)を用いて,地震時の懸垂氷河の崩落と,その後の平常時の崩落の特徴とその違いを調べた.
 ヘリコプターからデジタル一眼レフカメラで1秒間隔の連続撮影を用い,ランタン・リルン峰の懸垂氷河とランタン谷底の雪氷土砂堆積物を撮影した.空撮は,2015年10月27日,2017年4月18日,10月8日, 2018年11月3日に実施したが,2017年4月と10月の2回の空撮は天候が悪く,ランタン村を覆った雪氷土砂堆積物の地形のみの撮影である.ヘリから取得した空撮画像は,SfM(structure from motion)ソフトを用いて,GoogleEarthとWorldView-2の地形表層モデル(DSM)からの地上基準点でオルソ画像と地形表層モデル(DSM)を作成した.全域の地震前後の画像データ(2015年1月21日と2015年10月27日)を比較したところ,25箇所で崩落が確認され,高度6000~7100mに分布し,崩落箇所の斜度は45~64°であった.崩落した地形場は,懸垂氷河の末端部だけでなく,氷河中央部~上部の凸部でも確認された.地震後の2015年10月27日と2018年11月3日のDSMを比較したところ,57箇所で崩落が確認され,高度5600-7100mに分布し,崩落の発生域は斜度43~76°であった.