日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC27] 雪氷学

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:縫村 崇行(東京電機大学)、石川 守(北海道大学)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、永井 裕人(早稲田大学 教育学部)

[ACC27-P05] 南イニルチェック氷河における氷河上湖の日変動特性

*櫻井 尚輝1奈良間 千之2井上 公3エセナマノブ モハメド4ザルベク ウセコブ4 (1.新潟大学、2.新潟大学理学科 、3.国立研究開発法人防災科学技術研究所、4.中央アジア応用地球科学研究所)

キーワード:氷河上湖、氷河湖出水、デブリ氷河、氷河内水路

近年,アジアの山岳地域においてデブリ氷河末端からの大規模出水が報告されている.カラコルム山脈のグルキン氷河では,2008年5~7月にデブリ氷河の末端部から突発的かつ多量の出水が生じ,カラコルムハイウェイの通行止めや家屋流出の被害がでた(Richardson et al., 2009).ブータン・ヒマラヤのチョゾ氷河では,2009年4月に出水が生じ,90km下流のプナカの町で混乱が生じた(Komori et al., 2012).このようなデブリ氷河からの出水の事例では,巨大な氷河湖は確認されておらず,デブリ氷河の氷河上湖や氷河内部に発達した氷河内水路に溜まった水が突然出水したと考えられている.デブリ氷河に発達する氷河上湖については,その面積が季節変動すること(Benn et al., 2017;Narama et al., 2017),氷河上湖の発達が氷河の表面傾斜や流動に関係すること(Reynolds.,2001; Liu et al., 2015; Miles et al., 2016),氷河の質量収支の状態と関係すること(Benn et al., 2012)などが明らかになってきている.さらに,ネパール中央部のランタン谷のリルン氷河では,ドローンによる空撮画像の解析から,氷河内水路の立地も推定されている(Miles et al., 2017).ここ数年間で氷河上湖の新知見が報告されているが,氷河上湖や氷河内水路の出水過程をLandsatなどの衛星画像から解析するには情報量が限られており,詳細な水の移動を解明するまでには至っていない.氷河上湖の出水に関連して引き起される被害を未然に防ぐためにも氷河上湖の理解は不可欠である.そこで本研究では,南イニルチェック氷河において,2017年と2018年のそれぞれ約1か月間,毎日実施したドローン空撮で取得されたデジタル画像とSfM技術により作成された20㎝解像度のオルソ画像とDSMから,氷河上湖の湖面の日変動を調べた.さらに,氷河上湖の発達と氷河内水路・氷河上水路の関係性についても検討した.