日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG32] Global Carbon Cycle Observation and Analysis

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:市井 和仁(千葉大学)、Patra Prabir(Research Institute for Global Change, JAMSTEC)、Forrest M. Hoffman(Oak Ridge National Laboratory)、Makoto Saito(National Institute of Environmental Studies)

[ACG32-P05] モンゴルの草原域におけるCO2フラックスのモニタリングと評価

*王 勤学1岡寺 智大1額尓 徳尼1渡邉 正孝2志々目 友博2大場 章弘2Ochirbat Batkhishig3 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.中央大学 研究開発機構、3.モンゴル科学院 地理地質生態研究所)

キーワード:炭素フラックス、草原生態系、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)

温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)のプロダクトデータを検証するため、本研究では、ウランバートル近郊(Nalaikh)及び都市の影響が少ない牧草地(Hustai)において、それぞれ渦相関法による温室効果ガスCO2のフラックス、即ち、草原生態系によるCO2吸排出量のモニタリングを実施した。モニタリングに必要なCO2フラックス測定システムの維持保守の一環として、標準ガスを用いてCO2アナライザーのキャリブレーションを実施した。これにより、観測当初から今までに約4年間の観測データが蓄積され、解析を行った。その結果、両サイトでのCO2吸収量は排出量より大きく、共に炭素の吸収源(シンク)であることが分かった。そのうち、NalaikhサイトでのCO2吸収量の平均値は約2.66μmol m-2 s-1であり、排出量は約1.53μmol m-2 s-1であるが、Hustaiサイトでの吸収量は約2.11μmol m-2 s-1であり、排出量は約1.37μmol m-2 s-1である (図1)。つまり、NalaikhサイトでのCO2純吸収量(0.76μmol m-2 s-1)はHustaiサイト(0.36μmol m-2 s-1)より大きいことが分かった。

なお、本研究の対象地域であるNalaikhとHustai両サイトのGOSAT L4BプロダクトデータのグリッドデータからCO2吸排出量の月平均値を抽出して、地上観測システムによるCO2フラックスの月平均値との比較を行った。その結果、季節的な変化パターンや変動幅が近いものの、GOSATによるCO2の排出量が大きく示されたため、両サイト共にCO2の排出源であると示唆された。しかし、地上観測のフラックス観測値を解析した結果、両サイト共にCO2の吸収量が排出量を上回る結果となり、共にCO2の吸収源であると示唆した(図2)。その原因を解明するため、今後、更なる検証が必要である。

最後に、モンゴル全土における草原域のCO2フラックスを推定するため、放牧強度を熟考した炭素フラックスの推定方法を検討した。その結果、ウランバートル市周辺のNalaikh地域では、放牧密度が高く、それによる炭素の損失量は草原生態系による炭素正味吸収量(NEP)の約19~38%を占めており、一方、都市から離れたHustai地域では、放牧活動による炭素の損失量はNEP の約7~20%であることを分かった(図3)。つまり、大都市周辺地域では、放牧活動が草地生態系の炭素吸収排出量に大きな影響を及ぼしていることが示された。この推定結果を検証するため、両サイトで定点カメラを設置し、柵内と柵外の植生の季節変動と家畜の影響を監視した。その結果、柵内外の植生バイオマスが家畜の摂取による影響が大きく、特に植生が最も旺盛な時期に柵内外の植生バイオマス量が大きく異なることが見られた。

本研究は環境省の「二国間クレジット制度(JCM)推進のためのMRV等関連するモンゴルにおける技術高度化事業」のご支援で実施されたものである。