日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG33] 中緯度海洋と大気

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:西井 和晃(三重大学大学院生物資源学研究科)、佐々木 克徳(Hokkaido University)、西川 はつみ(北海道大学 低温科学研究所)、大石 俊(名古屋大学 宇宙地球環境研究所 陸域海洋圏生態研究部)

[ACG33-P01] 粒子追跡法を用いた北太平洋亜寒帯境界における海水交換の解析

*芦田 隼人1三寺 史夫2西川 はつみ2 (1.北海道大学理学部地球惑星科学科、2.北海道大学低温科学研究所)

北太平洋の混合水域は気候変動や生態系変動に考えられており、Isoguchi et al.[2006]では西岸境界から離れて二つの準定常ジェットが形成されることが指摘された。Mitsudera et al.[2018]ではそのジェットの形成のメカニズムと近傍に存在する標高わずか500mの地形との関係が示された。

平均海面高度のコンターより、北アメリカ大陸の西岸に亜寒帯循環と亜熱帯循環の境界がはっきりとわかる。その境界をたどるとJ2(Isoguchi et al.[2006])を通り160°E付近で40°Nの緯線に一致する。38-42°N155-165°Eの海域(Box)に着目し、Boxに粒子を配置し粒子追跡を行った。

Boxの北東43°N167°Eに存在する標高約500mの微高地形M2(Isoguchi et al.[2006])が存在するためにM2の東側にできる準定常ジェットJ2はBox近傍で顕著な流れを形成したが、Boxの40°N以南を通った水はほとんどがそのまま亜熱帯へ行きJ2の影響をあまり受けないことが分かった。

Boxに入ってくる水は大部分を黒潮起源水Kuroが占め、親潮起源水Oyaはわずかであった。Boxに入ってくるKuroはBoxの40°N以南でその割合が6割を超えた。Boxの南側から流されたKuroはほとんどが亜熱帯循環に戻っていくが、Boxの40°N以北から流されたKuroは多くが亜寒帯循環へと入っていく。Boxの北側はJ2の影響を受けやすいと考えられるので、Kuroの亜寒帯への輸送においてJ2の担う役割は大きいと考えられる。また、Boxに入ってくる親潮起源の水OyaはBoxの40°N以南では1割程度の割合だが、40°N以北では3,4割ほどとOyaも40°Nを境にして割合が変化した。OyaはBoxの北側に行くほど亜寒帯循環に戻っていく可能性が高いが、亜熱帯循環に入っていくOyaも見受けられる。
J2は、亜熱帯循環由来の高温高塩であるBoxの水を低温低塩な亜寒帯に運ぶ役割を担っており、水深約6000mの北太平洋において標高がわずか500m程度の微高地形が海洋循環に影響を与えていると考えられる。