日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 熱帯インド洋・太平洋におけるマルチスケール大気海洋相互作用

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 104 (1F)

コンビーナ:清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、釜江 陽一(筑波大学生命環境系)、座長:清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、名倉 元樹(海洋研究開発機構)

09:15 〜 09:30

[ACG38-02] 熱帯太平洋変動が北極気候に及ぼす影響とその季節性

*瀧川 翼1小坂 優1田口 文明1Svendsen Lea2 (1.東京大学先端科学技術研究センター、2.ベルゲン大学ビヤークネス気候研究センター)

キーワード:ENSO、太平洋十年規模変動、遠隔影響

近年、北極における気温は全球平均気温のおよそ2倍の速さで上昇しており、この現象は北極温暖化増幅(Arctic Amplification)として知られている。産業活動に伴う温室効果ガス増加が北極温暖化へ影響を及ぼしていることは先行研究からも明らかであるが、内部変動の影響については現在も様々な研究が行われている。Svenden et al. (2018)は、20世紀初期に観測された北極温暖化における主要因が太平洋十年規模変動であったことを、大気海洋結合ペースメーカー実験によって示した。しかし、太平洋の内部変動が北極温暖化にどの程度影響を及ぼすのか、さらにその遠隔影響の詳細なメカニズムは明らかになっていない。

本研究では、熱帯太平洋変動と北極気候の関係性を異なる時間スケールに着目して調査することを目的とし、大気海洋結合モデル(GFDL CM2.1)によるコントロール実験(外部強制力を産業革命以前に固定した実験)を用いた解析を行った。これにより、熱帯太平洋変動に対する高緯度地域地表面気温の応答は、経年変動よりも十年規模変動で大きくなることが明らかになった。また、北極気温偏差の応答は地表面でピークをとり高度に伴って減少することも発見された。さらに、熱帯太平洋十年規模変動に伴う海面水温偏差はそれ自体の季節性が非常に弱いにも関わらず、それに応答する北極気温と海氷は冬季にピークをもつ強い季節性が見られた。これらの特徴が放射強制力によって引き起こされる北極温暖化と類似していることから、熱帯太平洋変動によって駆動される局所的なフィードバック機構が北極気候変動において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。