日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 熱帯インド洋・太平洋におけるマルチスケール大気海洋相互作用

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 104 (1F)

コンビーナ:清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、釜江 陽一(筑波大学生命環境系)、座長:東塚 知己(東京大学)、釜江 陽一(筑波大学)

10:45 〜 11:00

[ACG38-07] 将来の赤道湧昇変化のメカニズム:CMIP5モデル横断解析

★招待講演

*見延 庄士郎1,2寺田 美緒2Deutsch Deutsch3 (1.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学分野、2.北海道大学大学院理学院、3.ワシントン大学海洋研究科)

キーワード:地球温暖化、モデル間の変動と平均、海洋力学

太平洋と大西洋における将来の湧昇変化を,第五次気候モデル相互比較プロジェクト(CMIP5)の24モデル出力を用いて調査を行った.使用したのは,過去再現実験(historical)と温暖化が最も急速に進展するRCP8.5シナリオ実験である.湧昇についてのCMIP5モデルの解析では初めて海洋の3次元の速度成分を推定して解析に用い,湧昇流速を密度面に直交する成分と密度面に平行な成分とに分離した.この湧昇流の成分分析と湧昇の変化についての複数モデル回帰分析を組み合わせることで,モデル間のばらつきとモデル平均が,共に二つのメカニズムで説明されることが示された.一つは表面付近の密度面に直交する湧昇流の弱化で,これはエクマン流の南北発散が弱まることによって生じる.他の一つは密度面に平行な湧昇流の弱化で,これは75-200mの赤道潜流のコア深度付近で生じ,その原因は赤道潜流の平坦化による.すなわち太平洋の西で深く東で浅い深度を東に流れる赤道潜流が,その西側での深度が浅くなって平坦化することで,湧昇が弱化するのである.両者のメカニズムとも,赤道東太平洋における貿易風の弱化によって引き起こされる.赤道大西洋では,モデル平均の湧昇流弱化もモデル間の湧昇流のばらつきも,貿易風の弱化および成層強化と関係するが,後者の二つの原因は赤道大西洋では独立ではないため,どちらが主な原因であるかを判断することは困難である.太平洋の湧昇流の変化が,異なる深度では異なるメカニズムによって生じることは,湧昇がもたらす影響を論じる上で重要である.大気に重要な海洋表面水温への湧昇の影響はエクマン湧昇の弱化が,より深い水深での湧昇が担う有光層への栄養分供給には赤道潜流の平坦化が,重要な役割を担うであろう.