日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG40] 沿岸海洋生態系─1.水循環と陸海相互作用

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 102 (1F)

コンビーナ:藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、山田 誠(龍谷大学経済学部)、小路 淳(東京大学大気海洋研究所)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、座長:藤井 賢彦山田 誠

09:20 〜 09:35

[ACG40-02] 小浜湾海底下の淡水性地下水の分布と周辺陸域地形との関係

*山田 誠1杉本 亮2中島 壽視3 (1.龍谷大学経済学部、2.福井県立大学海洋資源生物学部、3.福井県立大学)

キーワード:海底湧水、扇状地、小浜湾

福井県小浜市に隣接する小浜湾では、これまでに、海底湧水の研究が精力的に行われており、小浜湾では海底湧水が湧出していることが明らかとなっている。しかし、海底湧水の賦存状況、つまり、海底下の淡水性地下水の分布状況については、まだ不明な点が多い。近年、海底下の水理構造を明らかにする目的で、曳航型の海底電気探査システムによる海底の地盤を対象とした電気探査が各地で行われている。海底下に淡水が存在すれば、その部分の比抵抗は周囲と比べ高くなる。電気探査で海底下の比抵抗分布を明らかにすることで、海底下の淡水の分布を見ることが出来る。本研究では、曳航型の電気探査システム(SuperSting: Advanced Geosciences, Inc.)を用いて、小浜湾の海底下の比抵抗分布を明らかにし、海底下の淡水性の地下水の分布状況を把握することを目的とする。加えて、その分布状況と周辺の陸域地形との関係性から、淡水性地下水の分布理由について考察する。

曳航調査を行った海底下の比抵抗値が示した範囲はおよそ0.1〜6Ωmであった。1Ωm以上の比較的高い値が見られた場所は、主に、扇状地の扇端部の沖合の陸に近い場所であった。調査地北部海域の扇端部から沖合方向に向かって観測した結果では、沖に向かって高比抵抗のエリアが伸びていた。しかし、さらに沖合では高比抵抗の場所は見られなかった。これらのことから、高比抵抗のエリアは汀線から沖に向かって500m程度広がっており、淡水性の地下水が、海底下数十mの深さに存在している可能性が示唆された。

調査地南部海域の北川流域河口部では、汀線から1km離れた場所で高比抵抗部が見られ、淡水性地下水が存在している可能性が示唆された。海底地形図を見ると、北川河口部から沖に向かっては、海底の傾斜が緩やかで、北川からの堆積物に覆われている可能性が高い。高比抵抗が観測された場所はその部分に当たり、海底に堆積した扇状地堆積物中に淡水性の地下水が存在していることが推察された。つまり、陸域の地下を流れてきた地下水が、そのまま海底下の扇状地堆積物内を流れて、海底下に淡水性地下水を供給していると考えられる。

以上のことから、小浜湾における海底下の淡水性地下水の分布は、陸域の扇状地の地形に強く影響されており、扇状地堆積物の海底下での広がりが淡水性地下水の分布を決めている可能性が示唆された。