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[ACG42-03] 海洋地球研究船「みらい」における南北両半球広緯度帯での外洋大気オゾン観測:西太平洋赤道域ではハロゲン化学が重要か?
キーワード:洋上大気組成観測、オゾン未知消失過程、ハロゲン類、西太平洋赤道域
対流圏オゾン化学やその気候インパクトを地球規模で十分に明らかにするためには、陸上での観測に加えて、洋上大気でのオゾン濃度測定が重要である。我々は2012~2017年にかけて、海洋地球研究船「みらい」での24航海(またはレグ)において、1万時間超の外洋上オゾン・一酸化炭素(CO)濃度観測を実施し、データを公開している(Kanaya et al., Atmos. Chem. Phys. Disc., 2019)。観測範囲は南大洋・インド洋・太平洋・北極海に及び、67° S~75° Nの広い緯度帯をカバーしているため、全球化学輸送モデルからの洋上オゾン分布を評価するのに適している。本発表では、得られた観測データの統計的な特徴や地理的分布、気塊の起源について概観したのち、大気化学輸送モデルCHASERへ多化学種の衛星観測を同化して得られた、対流圏化学再解析データversion 2 (TCR-2)のオゾン濃度場を本観測によって評価して結果を示す。とくに、西太平洋赤道域(125–165° E, 10° S –25° N)において、10ppbを下回るレベルの低オゾン濃度が、TCR-2や化学気候モデル相互比較ACCMIPでのモデル結果と比べて高頻度に観測された点に注目する。観測に対するTCR-2での過大評価に関する差分濃度は、165–180° E, 15 –30° Nを満たす海域上に気塊が滞在した時間と正相関することがわかった。また、その海域上での気塊滞在中に、0.25 ppb h−1の追加消失項があれば、観測データがよく再現されることがわかった。ハロゲン化学が本研究で扱ったモデル計算では共通して考慮されておらず、ヨウ素化学などによる対流圏オゾン破壊がこの海域で活発である可能性が示唆された。海洋表層から大気へのハロゲン類供給過程や、境界面での不均一反応について今後追究することが重要である。我々の洋上での観測データは、陸上を中心とするTropospheric Ozone Assessment Report (TOAR)での観測データセットと相補的あり、対流圏オゾンの全球像解明に資するものと考えている。