日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG43] 気候変動への適応とその社会実装

2019年5月26日(日) 09:00 〜 10:30 301A (3F)

コンビーナ:石川 洋一(海洋研究開発機構)、渡辺 真吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、大楽 浩司(防災科学技術研究所)、座長:大楽 浩司(防災科学技術研究所)、石川 洋一(海洋研究開発機構)

10:15 〜 10:30

[ACG43-06] 近未来の温暖化環境下における黒潮域のマイワシ資源量予測

*西川 悠1西川 史朗1若松 剛2,3石川 洋一1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.Nansen Environmental and Remote Sensing Center、3.Bjerknes Center for Climate Research)

キーワード:マイワシ、黒潮、地球温暖化

マイワシ(Sardinops melanostictus)の資源量は、海洋環境変化の影響を受けて100倍近く変動する。資源量変動に最も影響するのは黒潮流速、二番目に影響するのは大気による冷却量の変化である。マイワシは冬季の日本南岸黒潮域で産卵し、黒潮に輸送されながら成長する。このとき、成育場である黒潮強流帯の水温が低いほど採餌・成長に好適な環境となり、仔魚の生残率が高くなって資源量は多くなる。マイワシ仔魚の成育場である日本近海での冬季の黒潮水温は、黒潮流速が遅いほど低くなる。流速が大きいと、亜熱帯海域から輸送されてきた黒潮水が、十分に冷却されないまま日本近海に到達するためである。黒潮流速は十年〜数十年スケールで変化することが知られている。過去数十年のマイワシ資源量は黒潮が速い時に減少する傾向があり、黒潮変動の影響を強く受ける魚であると言える。マイワシは日本における重要な水産資源であり、将来の資源量、特に地球温暖化の影響を知りたいという需要は大きい。しかし資源量を左右するマイワシ仔魚の成育場は、黒潮強流帯のごく狭い場所に限られることから、これまでの温暖化予測モデルの空間解像度では成育場の環境を詳しく調べることができなかった。我々のグループは既往の低解像度温暖化予測モデルCMIP5に力学的ダウンスケーリングを施し、マイワシ資源量予測を行うに十分な0.1ºの水平解像度を持つ温暖化予測シミュレーション結果を得た。そこで本研究では、現時点までのマイワシ資源量を成育場水温に基づいて再現する資源量推定モデルを構築し、このモデルに高解像度温暖化予測シミュレーションから得られた将来の成育場水温変化を適用した。今回は、成育場水温の変化に伴って2100年までのマイワシ資源量がどのように変化するかを、特にこれまで資源量に決定的な影響を与えていた黒潮流速との関係に焦点を当てて発表する。