日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 沿岸海洋生態系─2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 102 (1F)

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、渡邉 敦(笹川平和財団 海洋政策研究所)、樋口 富彦(東京大学大気海洋研究所)、座長:梅澤 有(東京農工大学)、宮島 利宏(東京大学)、渡邉 敦(東京工業大学)、樋口 富彦(東京大学大気海洋研究所)

16:20 〜 16:35

[ACG44-09] 衛星水温分布を用いた西部瀬戸内海における藻場植生境界水温の推定

*吉江 直樹1加部 晏諒1島袋 寛盛2吉田 吾郎2 (1.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、2.水産研究・教育機構)

キーワード:藻場、気候変動、植生境界、リモートセンシング

海藻や海草の群落である藻場は、沿岸漁業を支える重要な要素であり、その他にも非常に多くの生態系サービスを人類に提供している。近年、この藻場を構成する海藻種の変化や分布面積の縮小が深刻化しており、将来の藻場植生分布の変遷が注目されている。これまで、気候変動に伴う将来の海水温上昇に応答した藻場植生分布の変化を予測する研究がなされてきたが(Takao et al., 2014等)、時空間解像度が非常に粗く(10年平均・100km平均)、植生の境界となる水温が曖昧であるという問題点があった。そこで本研究では、南北に約100kmという狭い海域だが、南北の水温差に起因して藻場植生分布が大きく異なる豊後水道を対象に、高時空間解像度の衛星水温データと藻場植生分布図を用いて藻場植生の境界となる水温を求めることを目的とした。衛星水温データはNOAAのAVHRR Pathfinder ver. 5.3 (時間解像度:1983-2014年の昼夜12時間毎、空間解像度:4km)を、藻場植生分布図は瀬戸内海区水産研究所の島袋らによるGISマップ(1976-1977年・1988-1991年・2013-2014年、1km)を用いた。衛星水温は沿岸域ではかなりのバイアスを持つことがあるため、船舶による現場観測水温データ(愛媛県沿岸定線調査、 1962-2014年各月、10km)を用いて推定精度を評価した。藻場植生分布図から、①温帯性コンブ目藻場の南限、②その他の温帯性藻場の南限、③温帯性・亜熱帯性藻場の移行域の南限(亜熱帯性の北限)の3つの植生境界を抽出し、最寒月(2月)と最暖月(8月)の水温の時系列変化を解析することにより、上記3つの植生境界となる水温を求めた。衛星水温は、鉛直混合の活発な冬季には推定精度が高く、成層化する夏季には過大評価であった。これは成層化に伴い海表面に極薄く形成される高温のスキンレイヤーと大気中の水蒸気による影響と考えられた。3つの植生境界の水温は、①が2月14.5℃、8月26.0℃、②が2月15.0℃、8月26.5℃、③が2月16.0℃、8月27.0℃であることが明らかとなった。①は1990年頃から冬季水温の上昇に伴い変化が始まり、2000年代の夏季の高水温の影響を受け北上したものと推察され、②の変化には夏季よりも冬季の水温変化の影響が大きいこと、③における南からの亜熱帯性藻場の進出は元来そこに生息していた温帯性藻場北上に起因することが示唆された。また、推定された8月の閾値は+0.5℃程度のズレがある可能性が考えられる。