日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-GE 地質環境・土壌環境

[A-GE28] 地質媒体における物質移動,物質循環と環境評価

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小島 悠揮(岐阜大学工学部)、濱本 昌一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)、斎藤 広隆(東京農工大学大学院農学研究院)、森 也寸志(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

[AGE28-P02] フィリピン・コルディリエーラの棚田の保全に関わる土壌環境特性

*黒住 知代1森 也寸志2宗村 広昭2Milagros How3 (1.岡山大学環境理工学部、2.岡山大学大学院環境生命科学研究科、3.Universal Harvester Incorporated)

キーワード:棚田、耕盤、フィリピン、世界遺産

フィリピンのルソン島北部に位置するコルディリェーラの棚田群は,水源涵養や農地という意味から地域の物質循環と食料生産に貢献している.また,世界遺産に指定されており,文化遺産としての保全が望まれているが,崩落の危機にさらされており,自然科学的にそのメカニズムを明らかにし,効率的な保全が新たに望まれている.本研究では,現地調査と土壌の分析を行い,棚田の崩落と保全に関わる因子を抽出することを試みた.仮説として,棚田は物理的な水貯留構造物であり,棚田一枚あたりの深さと重さが不安定性を生み出すと考えた.バナウェー市を中心にViewDeck, Bangaan,Hapaoについて調査したところ,所々において,棚田の田面水に腐敗又は発酵臭があり,耕盤層が深めに計測された.また,現地浸透試験ではガスの発生があり,透水係数が低い又は計測不能になることがあった.有機物の過剰投入によってガスが発生し,土粒子の沈降・圧密が不十分で耕盤が安定せず,貯留水分が大きく崩落のリスクを抱えていると推定された.有機物の投入は肥沃土を高め収量を増やすことに貢献するが,湛水を基本とする水田管理では土壌環境・水質悪化の原因にもなりうるため棚田の保全と稲の収量のバランスの見極めが必要であると考えられた.