日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-GE 地質環境・土壌環境

[A-GE30] 地球陸域表層の土壌環境の保全と修復

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 202 (2F)

コンビーナ:森 也寸志(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、座長:森 也寸志(岡山大学)

13:50 〜 14:05

[AGE30-01] ニューラルネットワークを用いた土壌表層の有機炭素量の予測

開田 行美1、*森 也寸志1珠玖 隆行1 (1.岡山大学大学院環境生命科学研究科)

キーワード:土壌有機炭素、ニューラルネットワーク、地球温暖化

土壌中の有機物の動態は地球最表層の物質循環に大きく影響し,また,陸域最大の貯蔵量を持つことから,その蓄積と消失は地球温暖化へ影響評価として高い関心を集めている.これまでの研究から土壌有機物量の推定についてはある程度の成果をおさめている.しかしながら自然の営みは非常に複雑であるため,推定に関わるパラメータは個別研究の蓄積から抽出されており,充分な量のデータを元に相互関係を考慮しながら推定されているわけではない.また一方で,膨大なデータを利用したとしても,何がどのように関わるか関数的に明らかにならない状態で全てのデータを利用しながら研究に取り組むことは時間的に無駄が多く,現実的ではない.

 近年の計算機の発達により,急速に現実的な課題への応用例が見られるようになってきた機械学習,ニューラルネットワークは,膨大なデータを読み込み,個々の関連を学習しながら自らの中にシステムを構築し,ターゲットとなる値を推定することができる.そこで本研究では,Harmonized World Soil Database (FAO, IIASA)で取得された土壌の16種類のデータセット約11000個(欧州に限定)を使って,土壌有機物がどのパラメータと関連づけられ,推定されるのかを調べた.再帰的特徴消去(Recursive Feature Elimination,RFE法)を用いて指定した特徴数になるまで特徴の消去を行い,ついでニューラルネットワークを使って,選択された特徴量から目的となる土壌有機物量を推測するモデルを作成した.
 検証した中では特徴量を7つにしたときに,ニューラルネットワークが最も良い成績を示した.粘土鉱物量,乾燥密度,粘土CEC,総CEC,塩基飽和度,交換性塩基,ESPが関連度が高いと評価されが,これには一般的にあまり使われないものも含まれており,興味深かった.このパラメータで構築したモデルは7割が土壌有機物量を非常に良く推定し,3割が極端に悪い結果となった.また,選択されたパラメータは土壌有機物量を説明するために必要なパラメータではあるが,非線形関数の中で,正・負どちらに働くのかは明らかにはならない.導き出された関係は非線形で非常に複雑であるので,一般的な理解が難しいが,学習モデルには人間の側から関数系を与えずに得られた成果であるため,未知の関係が想像される現象から必要なパラメータを抽出する際には強力な道具となることが期待された. また,その上ですすめる研究はより効果的になると想像され,複雑な因子が絡む環境動態の解明に大きく貢献すると与えると考えられた.