日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-GE 地質環境・土壌環境

[A-GE30] 地球陸域表層の土壌環境の保全と修復

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 202 (2F)

コンビーナ:森 也寸志(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、座長:森 也寸志(岡山大学)

14:40 〜 14:55

[AGE30-04] 畑地における溝切りと作物残渣の挿入が雨水の浸入と土壌侵食に及ぼす影響

*大澤 和敏1森 也寸志2干川 明 (1.宇都宮大学、2.岡山大学大学院環境生命科学研究科)

キーワード:土壌侵食、浸入、溝切り、有機物の挿入、サトウキビ、沖縄

沖縄地方では,気候,地形,土壌特性などの自然的要因や,農業活動,開発工事などの人為的要因により,農地における土壌侵食や河川および沿岸域における土砂,栄養塩流出の問題が顕著となっている.その結果,農地の地力および生産性を低下させ,流域圏の水環境へ悪影響を及ぼしている.これまで地表面の被覆による土壌侵食の抑制効果は多く報告されているが,雨水の浸入促進による土壌侵食の抑制に着目した研究は少ない.そこで,本研究では沖縄県石垣市におけるサトウキビ畑を対象として,雨水の浸入を促進する畝間の溝切りと溝への有機物の挿入に着目し,それらが表流水の流出量及び土壌侵食量へ与える影響を明らかにすることを目的とした.

 休閑期における試験結果では,ほぼ全てのイベントにおいて,雨水の浸入が促進されたため,流量は溝切りをした試験区が小さくなった.時系列でみると,多くのイベントで初期降雨損失が溝切りをした試験区では大きかった.しかし,土砂流出量において比較的大きなイベントで,溝切りをした試験区が標準区を上回った.総流量は溝切りによって約69%の削減となり,総土砂流出量は溝切りによって約57%の増大となった.以上より,残渣が地表面を覆った状態の休閑期では,溝切りによって表流水の発生は抑制できるが,土壌のかく乱によって侵食が増大してしまうことが分かった.

 栽培期における試験結果では,全てのイベントにおいて,溝に作物残渣を挿入した試験区は標準区より流量が常に小さく,溝へ雨水が浸入した.時系列でみると,休閑期と同様に多くのイベントで初期降雨の浸入が確認できた.土砂流出量に関して,作物残渣を挿入した試験区は標準区より常に小さく,土砂流出が抑制できた.総流量において,作物残渣を挿入した試験区は標準区と比較して約39%の削減となった.総土砂流出量において,作物残渣を挿入した試験区および不耕起栽培(株出し栽培)をした試験区は標準区と比べて,それぞれ約64%および約89%の削減となった.以上より,植え付けや耕起等の作業によって土壌のかく乱がある栽培期では,溝や有機物の挿入は雨水の浸入を促進し,不耕起栽培ほどではないが,土砂流出を顕著に抑制できることが分かった.