日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-GE 地質環境・土壌環境

[A-GE30] 地球陸域表層の土壌環境の保全と修復

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:森 也寸志(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

[AGE30-P02] 線状型マクロポア導入による表面流出の削減効果

*清広 真輝1森 也寸志1大澤 和敏2干川 明3 (1.岡山大学 大学院 環境生命科学研究科 、2.宇都宮大学 農学部、3.石西礁湖サンゴ礁基金)

キーワード:土壌流亡、マクロポア、表面流出

線状型マクロポア導入による国頭マージの表面流出の抑制

沖縄県石垣島では土壌流亡が問題となっている。土壌流亡は営農に影響を与えるだけでなく,珊瑚などの海産資源にも悪影響を与える。原因として、透水性の低い層であるクラストの発生が挙げられる。クラストは強雨時の雨滴の圧密,土壌間隙の目詰まりにより生じる。対策として鉛直方向に穴をあけ,繊維状物質を挿入する人工マクロポアが提案され,流亡対策と成り得るデータが示されていたが,設置の労力が課題だった。これを踏まえ提案されたのが線状型マクロポアである。線状型マクロポアは従来の穴の代わりに深さ30cm程度の溝を引き,サトウキビ残渣を鋤き込む。溝を引く作業は農業機械で行うことができ,サトウキビ残渣は現地で入手できるため,より実施しやすい人工マクロポアであると考えられる。本研究では,線状型マクロポアの下方浸透促進による表面流出・土壌流亡の抑制の検証を目的とし,ライシメータを用いた室内降雨実験を行った。
 供試土として沖縄県石垣島のサトウキビ圃場から採取した土壌を風乾させ,2㎜篩を通過したものを使用した。これを体積含水率0.10m³m⁻³,乾燥密度1.20gcm⁻³に調整し,高さ・幅24cm,奥行き36cmのライシメータに充填し、側面から土壌水分・温度・ECセンサー(5TE,Meter)を挿入した。ライシメータは現場と同じ傾斜3%で設置し,25℃の恒温室で降雨実験を行った。20㎜h⁻¹の降雨を4時間降らせ,降雨終了24時間後に同様の条件で再度降雨を行った。処理区として耕起区,植物残渣を表層に残す不耕起区,線状型マクロポア区、対象区として中空溝切のみの溝切区を用意し,表面流出,下方排水,土壌水分、流出土砂量を測定した。
実験の結果、表面流出量は耕起区で最も多く、次に不耕起区で多かった。線状型マクロポア区では表面流出は発生しなかった。溝切区では溝構造の崩壊が起こり、表面流出を採取することはできなかった。このことから、線状型マクロポアが表面流出を抑制したと考えられる。圃場では溝切区で最も流出量が多く,室内実験においても溝が崩壊したが,表面流出自体は確認することが出来た。
流出土砂量は室内実験では耕起区で最も多くかった。不耕起区でも流出が確認できたが、耕起区と比較して少なかった。このことから不耕起処理では表面流出は発生するが土砂流出は抑制されると考えられる。線状型マクロポア区では流出はなく、溝切区では流出は計測できなかった。対して圃場では溝切区で最も多く、次いで耕起,線状型マクロポア,不耕起区の順であった。このため室内実験でも溝切区で多くの土砂が移動していたと考えられる。また、線状型マクロポア区と不耕起区の現場と室内実験の結果の違いは土壌に対するマクロポアの面積の比が影響していると考えられる。
本研究では室内実験で圃場に近い条件の線状型マクロポアを再現し、土砂流出抑制効果を検証した。その結果、線状型マクロポアが下方浸透を促進し表面流出を削減,土砂流出を抑制することが示唆され,圃場実験と同様の傾向を得ることができた。また、圃場調査では溝切区において目詰まりが発生することにより表面流出,土砂流出が増加すると推定されていたが、今回の結果から降雨の早い段階で構造そのものが崩壊している可能性が示された。