日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW24] 同位体水文学 2019

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 105 (1F)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、座長:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、森川 徳敏(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

09:45 〜 10:00

[AHW24-03] 沖縄の降水の17O-excess値を用いた水蒸気起源における相対湿度の定量的な復元

上地 佑衣菜1、*植村 立1 (1.琉球大学 理学部)

キーワード:17O、安定同位体、モンスーン、降水

近年、酸素17(δ17O)の高精度測定が可能になり、δ18Oとδ17Oを組み合わせた17O-excessという指標が提案された。降水の17O-excessの変動は、海洋上の蒸発における分子拡散により生じると考えられており、相対湿度を示す指標として注目されている。しかし、その後の観測データからは、起源海域の湿度以外の影響(雨滴の再蒸発等)があることが示唆されている。これらの研究では南極・北極や砂漠地帯など極端な場所での研究例が多く、降水の17O-excessから復元した湿度を観測的に検証した例はない。そこで本研究では、湿度が高く、雨滴の再蒸発の影響が小さいと予想される沖縄島降水の17O-excessを測定し、復元した蒸発時の湿度を観測された海洋上の湿度と比較し検証した。

沖縄本島の降水の17O-excessは明確な季節変動を示した。この降水の17O-excess値から蒸発モデルを使用して、蒸発起源海域の相対湿度(hn)を復元したところ、17O-excessに基づくhnの値は、降水の起源海域の海洋上で観測されたhnと誤差範囲内で一致した。様々なバイアス(閉鎖系の仮定、降水形成時の効果、海水の17O-excess値)を考慮しても復元したhnは、起源海域におけるhnと整合的であった。したがって、沖縄本島の降水の17O-excessは分子拡散による同位体分別の強弱、つまり降水の起源海域のhnによって、変動していると考えられる。この結果は、湿潤な熱帯および亜熱帯地域における17O-excessは、降水の起源海域の相対湿度を定量的に復元することが可能なユニークなトレーサーであることを示している。また、鍾乳石中の流体包有物および炭酸カルシウムの中の17Oの分析によって過去の気候変動の定量的復元に対しても有用であることを示唆している。

文献
Uechi, Y. and R. Uemura, Dominant influence of the humidity in the moisture source region on the 17O-excess in precipitation on a subtropical island, Earth and Planetary Science Letters, in press.