[AHW24-P04] 河川の流水断面における溶存成分濃度と酸素・水素同位体比の分布
-埼玉県福川を例として-
キーワード:河川水、流水断面、溶存成分、酸素・水素同位体、濃度分布、負荷量
河川の水環境を議論する際には,河川水中に含まれる物質の濃度だけでなく,それぞれの物質の濃度に河川流量を乗じることによって得られる負荷量を明らかにすることが不可欠である.そのためには,河川流量ならびに各物質の濃度を詳細に測定・分析し,負荷量を正確に算出することが重要となる.
負荷量を求める場合,従来は物質の濃度については河川の流水断面の1ポイントのみの試料(一般的には流水断面中央の表層付近の河川水試料)で代表させることが多く,流水断面における濃度の分布構造を明らかにした研究例はほとんど見当たらない.すなわち,採水した試料の流水断面における代表性,さらにはその濃度を流水断面の代表値として用いた場合に生ずる負荷量推定値への影響については,これまで十分な検討がおこなわれていないのが現状である.これは同位体をトレーサーに用いる場合でも同様である.
そこで,本研究では埼玉県北部を流れる福川(川幅7.7m,平均水深0.5m)において河川の流水断面の深度別採水をおこない,流水断面における主要溶存成分と溶存態重金属類の濃度分布,ならびに酸素(δ18O)・水素(δD)同位体比の分布を明らかにすることを目的とした.また,流水断面中央の表層付近の試料水の濃度・同位体比をもって流水断面を代表させた場合,負荷量の推定結果にどの程度の誤差が生じるのかについて議論をおこなった.
主要溶存成分については濃度の分布パターンはイオン毎に異なるものの,いずれの溶存イオンも流水断面の水平・鉛直方向に濃度の大きな差はなかった(最大で7.2%).対照的に,溶存態重金属類では物質毎の濃度の分布パターンはほぼ一様であったが,いずれの物質にも水平・鉛直方向に顕著な濃度差が認められた(最大で95%).同位体比については,分布パターンは流水断面における流速のそれと類似しており,δDで数‰,またδ18Oで0.3‰程度の差が同一流水断面内において認められた.
溶存物質と同位体の負荷量の算出に際して3つのケースを想定し,それぞれのケースで得られた値について比較検討をおこなった.その結果,一般的な調査・研究でよく採用される,流水断面中央の表層水試料で流水断面全体の濃度・同位体比を代表させるやり方では,負荷量を正確に評価できない場合があることが明らかとなった.この傾向は溶存態重金属類の場合にとりわけ顕著となる.河川において負荷量の検討をおこなう際には,試料水の採水ポイントや流量の算出方法について十分考慮・検討する必要がある.
今後,さらに高密度の採水と高精度の流量測定をおこない,溶存物質濃度や同位体比の流水断面における分布構造と負荷量の実態を詳細に明らかにすることが求められる.また,今回は重金属類については溶存態重金属類のみを対象としたが,将来的には懸濁態重金属類も加味した上で,重金属類の負荷量の正確な調査・推定方法を確立していく必要がある.
負荷量を求める場合,従来は物質の濃度については河川の流水断面の1ポイントのみの試料(一般的には流水断面中央の表層付近の河川水試料)で代表させることが多く,流水断面における濃度の分布構造を明らかにした研究例はほとんど見当たらない.すなわち,採水した試料の流水断面における代表性,さらにはその濃度を流水断面の代表値として用いた場合に生ずる負荷量推定値への影響については,これまで十分な検討がおこなわれていないのが現状である.これは同位体をトレーサーに用いる場合でも同様である.
そこで,本研究では埼玉県北部を流れる福川(川幅7.7m,平均水深0.5m)において河川の流水断面の深度別採水をおこない,流水断面における主要溶存成分と溶存態重金属類の濃度分布,ならびに酸素(δ18O)・水素(δD)同位体比の分布を明らかにすることを目的とした.また,流水断面中央の表層付近の試料水の濃度・同位体比をもって流水断面を代表させた場合,負荷量の推定結果にどの程度の誤差が生じるのかについて議論をおこなった.
主要溶存成分については濃度の分布パターンはイオン毎に異なるものの,いずれの溶存イオンも流水断面の水平・鉛直方向に濃度の大きな差はなかった(最大で7.2%).対照的に,溶存態重金属類では物質毎の濃度の分布パターンはほぼ一様であったが,いずれの物質にも水平・鉛直方向に顕著な濃度差が認められた(最大で95%).同位体比については,分布パターンは流水断面における流速のそれと類似しており,δDで数‰,またδ18Oで0.3‰程度の差が同一流水断面内において認められた.
溶存物質と同位体の負荷量の算出に際して3つのケースを想定し,それぞれのケースで得られた値について比較検討をおこなった.その結果,一般的な調査・研究でよく採用される,流水断面中央の表層水試料で流水断面全体の濃度・同位体比を代表させるやり方では,負荷量を正確に評価できない場合があることが明らかとなった.この傾向は溶存態重金属類の場合にとりわけ顕著となる.河川において負荷量の検討をおこなう際には,試料水の採水ポイントや流量の算出方法について十分考慮・検討する必要がある.
今後,さらに高密度の採水と高精度の流量測定をおこない,溶存物質濃度や同位体比の流水断面における分布構造と負荷量の実態を詳細に明らかにすることが求められる.また,今回は重金属類については溶存態重金属類のみを対象としたが,将来的には懸濁態重金属類も加味した上で,重金属類の負荷量の正確な調査・推定方法を確立していく必要がある.