[AHW25-P01] 流域水資源管理に求められる広域地下水流動評価
キーワード:流域水資源管理、持続可能な地下水開発、広域地下水流動系、首都圏
世界有数の大都市圏である首都圏を擁する関東平野では,重要な水資源として,地下水が各地で大規模に開発されてきた.地下水開発は,都市域の発展・拡大を支えてきた一方で,地下水資源の減少や地盤沈下等をもたらしてきた.このため,国や自治体は,法や条例によって地下水揚水を規制してきた.しかし近年,病院等の施設の水源や,人口減少に伴う自治体・事業体の上下水道インフラの維持コストの負担増への対応,大規模な自然災害の発生時の緊急水源等として,地下水の需要が再び高まっている.これらの地下水需要に対応し,地盤沈下を再発させることなく地下水を適正に利用するためには,流域・地下水盆単位での水資源管理が求められる.また,水資源管理を適切に行ううえで,各地域での地下水利用の影響を把握するとともに,広域地下水流動の変化を把握することが不可欠である.
筆者らは,関東平野の中央部に位置する埼玉県平野部を対象として,地下水開発に伴う広域地下水流動の変遷のプロセスやメカニズムを明らかにするための調査を実施している.当該地域では,過去の地下水開発や揚水規制によって地下水流動が変化しつづけてきた.将来の地下水需要に対応する,すなわち,各地での地下水需要に対して地下水流動がどのように変化するかを予測するためには,地下水流動の現状を把握するだけでなく,地下水流動の変遷のメカニズムを明らかにすることが重要である.また当該地域では,地域内での地下水開発だけでなく,周辺の都県内での地下水利用の影響も受けることから,地下水流動をより広域で把握することも同時に求められる.
当該地域では,地下水揚水規制によって各地の地下水開発層中の水理水頭が回復してきたが,この過程において地域の全体的な水理水頭分布は変化せず,地域内の水頭差が減少してきた.このことから,地下水の流動機構は大きく変化していないものの,フラックスは減少してきたことが考えられる.ただし,現在の水理水頭分布ならびに地下水流動機構は,本来のもの(大規模開発以前)とは大きく異なっている.このことは,当該地域の地下水流動が地盤沈下の進行を留めている状態に過ぎず,新たな定常的状態となりつつあることを示唆する.本発表では,これまでの調査結果に基づいて,当該地域における地下水流動の人間活動による変遷と現状,また広域地下水流動を適切に把握するための課題について論じる.
筆者らは,関東平野の中央部に位置する埼玉県平野部を対象として,地下水開発に伴う広域地下水流動の変遷のプロセスやメカニズムを明らかにするための調査を実施している.当該地域では,過去の地下水開発や揚水規制によって地下水流動が変化しつづけてきた.将来の地下水需要に対応する,すなわち,各地での地下水需要に対して地下水流動がどのように変化するかを予測するためには,地下水流動の現状を把握するだけでなく,地下水流動の変遷のメカニズムを明らかにすることが重要である.また当該地域では,地域内での地下水開発だけでなく,周辺の都県内での地下水利用の影響も受けることから,地下水流動をより広域で把握することも同時に求められる.
当該地域では,地下水揚水規制によって各地の地下水開発層中の水理水頭が回復してきたが,この過程において地域の全体的な水理水頭分布は変化せず,地域内の水頭差が減少してきた.このことから,地下水の流動機構は大きく変化していないものの,フラックスは減少してきたことが考えられる.ただし,現在の水理水頭分布ならびに地下水流動機構は,本来のもの(大規模開発以前)とは大きく異なっている.このことは,当該地域の地下水流動が地盤沈下の進行を留めている状態に過ぎず,新たな定常的状態となりつつあることを示唆する.本発表では,これまでの調査結果に基づいて,当該地域における地下水流動の人間活動による変遷と現状,また広域地下水流動を適切に把握するための課題について論じる.