日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS07] 季節内から十年規模の気候変動と予測可能性

2019年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:望月 崇(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、V Ramaswamy(NOAA GFDL)、Doug Smith(Met Office)、森岡 優志(海洋研究開発機構)、座長:V Ramaswamy(NOAA GFDL)、望月 崇(海洋研究開発機構)

15:00 〜 15:15

[AOS07-06] 気象研究所における弱結合同化システムの開発とその評価

★招待講演

*藤井 陽介1小林 ちあき1石橋 俊之1高谷 祐平1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:結合データ同化、結合再解析、季節内・季節予報、海面水温、降水

 気象研究所では気象庁の現業システムを用いて弱結合同化システムMRI-CDA1の開発を行っている。MRI-CDA1は数値天気予報用の4次元変分法(4DVAR)全球大気データ同化システムと季節予報用の3次元変分法全球海洋データ同化システム、大気海洋結合モデルで構成される。大気の4DVARデータ同化ルーチンにおいて、結合モデルはアウターループとして用いられが、インナーループでは非結合の大気モデルが用いられる。大気の4DVAR解析は6時間のサイクルで実行される一方、海洋解析は10日毎に実行され、海洋インクリメントがアウターループにおける結合モデルの積分時に適用される。
 上記システムの検証のため、結合再解析実験を2013年1月から2015年12月にかけて実施したところ、気象庁55年再解析(JRA55)で見られた北太平洋の熱帯収束帯(ITCZ)などの降水過多が、結合再解析では解消することが確認された。また、結合再解析では、非結合の再解析では再現されない海面水温と降水量のラグ相関関係が正しく表現されていた。しかし、降水変動が改善するのは、大気について衛星データを除く従来型のデータのみを同化した場合のみであり、衛星データも同化した場合は、海洋同化で再現された海面水温に大気場が適応するのではなく、データ同化で決められた大気場に合うように海面水温の方が調節を受けていた。その他、大気の観測誤差共分散を大きく設定した実験も実施していて、元の設定での結合再解析に比べて、熱帯域での降水の変動が概ね改善していることを確認した。