日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS09] 海洋混合学:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 303 (3F)

コンビーナ:安田 一郎(東京大学大気海洋研究所)、日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、西岡 純(北海道大学低温科学研究所)、伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、座長:伊藤 進一(東京大学)

15:00 〜 15:15

[AOS09-17] 日向灘沖の陸棚斜面近傍を流れる黒潮において、水平30km、鉛直200m規模で観測された著しく強い乱流混合

*長井 健容1Duran Silvana2Otero Diego2森 泰貴1吉江 直樹3大城 一輝3長谷川 大介4仁科 文子5小針 統5 (1.東京海洋大学 海洋環境科学部門、2.国立アグラリアラモリーナ大学水産学部、3.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、4.東北区水産研究所・国立研究開発法人水産研究・教育機構、5.鹿児島大学 水産学部)

キーワード:黒潮、乱流、栄養塩

表層で貧栄養な黒潮は、一方で、光の届かない亜表層では、栄養塩ストリームとして、日本南岸に沿って多量の栄養塩を輸送することが知られる。しかしながら、乱流等の密度面を横切る拡散や、湧昇などの輸送で有光層まで運ばれない限り、植物プランクトンは、この栄養塩ストリームの栄養塩を、光合成に利用することができない。果たして、日本南岸を亜表層で運ばれ続けている栄養塩は、光の届く陸棚上の表層へどの程度運ばれるのか、運ばれるのであれば、どの様に運ばれるのかについては、岸に接近して流れる黒潮と陸棚間における乱流微細構造を含めた詳細な物理場と栄養塩の高解像度同時観測が十分に行われていない為に不明である。本研究では、黒潮が陸棚斜面に乗り上げるように流れる日向灘において、自由落下曳航式乱流微細構造観測装置Underway-VMPを用いた乱流微細構造の鉛直断面観測と、これに並行した多項目プロファイラーRINKO Profilerを用いた自由落下曳航観測を交互に実施し、さらに、栄養塩の観測を実施した。観測の結果、黒潮が日向灘の大陸棚斜面近傍を流れるに際に、振幅の大きな鉛直高波数の内部波に伴う流速シアーと、それに伴った強い乱流混合が発生していることがわかった。乱流運動エネルギー散逸率は、黒潮を横断する断面において黒潮近傍の、表層200 mで30 kmに渡ってO(10-7 Wkg-1)程度と大きく、渦拡散係数は、同様な範囲で平均的にO(10-3 m2s-1)程度と、周辺の海域に比べて100倍程度の散逸率と拡散が、水平20-30km、鉛直200mスケールに渡って発生していることが初めて明らかとなった。同時に観測した濁度は、陸棚縁で、海底から表層数10mまで高くなり、乱流に伴う懸濁粒子の巻き上げが発生していることを示唆した。この乱流に伴う硝酸塩の拡散フラックスを見積もったところ、同様な範囲の有光層下部で、1-10 mmol N m2day-1程度の硝酸塩の供給が発生していることが明らかとなった。