[AOS09-P17] 西部北太平洋亜熱帯観測点KEOにおける時系列観測で明らかとなった貧栄養海域の生物地球化学への低気圧性渦と台風の影響
キーワード:観測点KEO、貧栄養海域、セジメントトラップ、低気圧性渦、栄養塩、台風
2014年, NOAA PMELの表層ブイの隣でセジメントトラップ実験を開始した。水深5000mに設置した2年間のセジメントトラップデータから、晩冬(3月)ー晩春(6月)間に生物起源物質フラックスの増加が観測された。NOAA表層ブイで観測されたSSTと表層付近の水温鉛直分布ならびに衛星クロロフィルデータから、この増加は冬季鉛直混合の発達による栄養塩の供給に伴う海洋表層付近の低次生物生産の増加に起因によるものと推定された。一方、表層付近の栄養塩が一般的に低い2014年10月および2014年12月ー2015年1月間にも生物起源物質フラックスの増加が観測された。海面高度偏差と水深5000m以浅の水温鉛直分布変化から2014年7月下旬ー8月初旬および11月に観測点KEOを低気圧性渦が通過し、中層水の湧昇が発生していたことが明らかとなった。これらのイベントが海洋浅層部に栄養塩を供給し亜表層水の低次生物生産を活発化させた結果、上記の秋季と冬季に観測された生物起源フラックスの増加を引き起こしたと推測された。本観測結果(低気圧性渦が低次生産を活発にすること)は3次元物理ー生物シミュレーションによっても定量的に説明することができた。セジメントトラップ観測を行なった2年間にいくつかの台風がKEO近辺を通過し、台風通過後に近慣性内部波が発生していたことがわかった。近慣性内部波による拡散混合の発達も低次生物生産を活発にする栄養塩の供給メカニズムの可能性があった。しかし数値シミュレーションの結果、拡散混合の発達による栄養塩供給量は推定される低次生物生産力の増加を引き起こすには少なすぎることが示唆された。