日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS09] 海洋混合学:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:安田 一郎(東京大学大気海洋研究所)、日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、西岡 純(北海道大学低温科学研究所)、伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)

[AOS09-P18] 本州南方海域のプランクトン群集に対する伊豆海嶺域の島陰効果

*日高 清隆1田所 和明1宮本 洋臣1市川 忠史1 (1.水産研究・教育機構)

キーワード:動物プランクトン、島陰効果

伊豆海嶺は本州南方の重要な海底構造であり、北緯30度付近まで連なる伊豆諸島を含む山脈状の地形が、駿河灘海域と常磐沖海域の境界となっている。その周辺では、島陰効果による表層への低温・高栄養塩な海水の湧昇とそれにともなうプランクトン分布量の増加が報告されている。しかしながら、これらの報告は、成層が進んでいる初夏から初秋にかけての事例であり、小型浮魚類の産卵と成長が起きる春季についての報告は乏しい。また、この海域は黒潮が通過していることから、増殖に要する時間の長い動物プランクトンについてはより下流で影響が現れることが考えられ、広域でその影響を検証する必要がある。今回は、衛星観測データと動物プランクトン現存量の広域データを元に、伊豆諸島周辺海域の島陰効果の影響について報告する。
衛星観測データについては、海表面クロロフィル濃度(MODIS-Aqua)について、東経135度30分から142度、北緯30度から37度、水深500m以深の範囲を集計した。動物プランクトン現存量データとしては、2月から3月にかけて水産研究・教育機構が本州南方で実施している観測のうち、目合334.5umのノルパックネットで0-150 mの範囲を鉛直曳網した試料を、Bench-top Video Plankton Recorder (B-VPR) によって分析して求めたカイアシ類現存量(体積および換算した生物量)を用いた。それぞれ、本州沿岸および伊豆海嶺域からの距離にともなうクロロフィル濃度およびカイアシ類現存量の変化を求めた。
海表面クロロフィル濃度は、本州沿岸から遠ざかるにつれて減少する傾向を示したが、本州沿岸から150〜250 km 付近に、クロロフィル濃度が高くなる海域がみられた。これらは、伊豆海嶺周辺の北緯32〜33.5度の範囲を中心としており、黒潮が離岸流路をとった際の島陰効果であると考えられた。一方でカイアシ類現存量については、本州沿岸部(50 km以内)で高い値がみられたほか、伊豆海嶺域からの距離で見た場合に100〜200 km付近で特に現存量が高い海域がみられたが、これらは房総半島沿岸に位置していた。これらにより、伊豆海嶺域の島陰効果は、動物プランクトンについては現存量の変化では本州沿岸域の影響を排除できず、産卵速度や増殖速度を種レベルで検証することが必要であると考えられた。