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[AOS13-01] 日本沿岸海況監視予測システムを利用した湾スケール・モデルの機動的開発
キーワード:沿岸モデル、現業モデル、日本沿岸海洋、ネスティング、モデル開発
我々は、水平解像度約2kmの海洋モデルと四次元変分法のデータ同化システムを基盤に用いて、日本沿岸全域の海洋変動を再現する「日本沿岸海況監視予測システム」(以下JPNシステム)を開発した。本システムは気象庁によって現業運用され、様々な沿岸海洋業務のプラットフォームとして利用される予定である。(システム詳細についてはOcean Dynamicsに投稿した Sakamoto et al. (2019)とHirose et al. (2019)を参照せよ。) しかし、約2kmのモデル解像度は、外洋に接する陸棚域や瀬戸内海といった比較的大きい内海のための最低限の解像度であり、社会とより密接にかかわる内湾や内海、海峡といった湾スケールの海域を対象とした情報提供はこれからの課題となっている。この課題解決に向けては、数百mの解像度で日本沿岸全域を覆うモデルも計画されているが、現在の通常の計算機ではその膨大な計算を実行できない。その点から、JPNシステムからネストした、高解像度・小領域の湾スケール・モデル群を沿岸域に配置するのが現実的と考えられるが、その場合は多数のモデルの管理コストが懸念される。そこで我々は、沿岸海況監視の将来的な拡張に向けて、必要なときに必要な領域の湾スケール・モデルを機動的に立ち上げるアプローチを検討している。その実現への第一歩として、湾スケール・モデルをすばやく構築できるパッケージの開発に着手した。現在、パッケージは主に3つの要素から成り立っている。一つ目は、我々が開発している数値モデル MRI.COM である。オフライン・ネスティング機能に加えて、海氷、潮汐や気圧応答など日本沿岸で重要となる力学要素の導入が可能である。二つ目は、「MRI.COM実験環境」として開発してきたモデルの前処理・解析ツール群である。これを利用することで、モデル実行に必要な地形データ等を比較的容易に作ることができる。三つ目は、JPNシステムによる日本沿岸海洋の解析データである。作成した湾モデルの初期値と側面境界条件にこのデータを利用することで、2008年以降であればいつからでも実験を始めることができる。これまでに実際に本パッケージを用いて、解像度100mの長崎湾モデルと、200mの大阪湾モデルを作成した。長崎湾モデルでは「あびき」と呼ばれる副振動現象を、大阪湾モデルでは2018年9月の台風21号による高潮を対象に、再現実験を試みている。発表ではそれらの結果も示す予定である。