日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS13] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 102 (1F)

コンビーナ:田中 潔(東京大学)、森本 昭彦(愛媛大学)、速水 祐一(佐賀大学)、一見 和彦(香川大学瀬戸内圏研究センター)、座長:森本 昭彦速水 祐一

14:00 〜 14:15

[AOS13-08] ノリ養殖による光環境の変化が植物プランクトン動態へ及ぼす影響

*南浦 修也1山口 創一1 (1.九州大学)

キーワード:養殖、有明海、光環境

冬季有明海ではノリの養殖が活発に行われており、その生産量は日本一を誇る。その一方で、赤潮の発生によるノリの色落ちが大きな問題となっている。既往の研究から、赤潮発生には光環境の好転が関係していることが分かっている。ノリ養殖時には沿岸域にノリ網が高密度に貼られ、その網にノリが付着し成長を遂げていく。こうした網およびノリ葉体による水中の光環境への影響は大きいことが容易に想像できるが、これまで研究された例は存在しない。本研究では、ノリ養殖域と非養殖域で水中光量子量を連続的に現地観測することにより、ノリ養殖が光環境へ与える影響を評価すると共に、その影響をノリ葉体の動的な成長の関数として表した。こうした結果を数値シミュレーションに組み込むことによる植物プランクトン動態がどう変化するかについて検討を行った。
現地観測を佐賀県有明水産振興センターが所有するノリ養殖域において、ノリ養殖直下とすぐ傍の養殖が行われていない海域にそれぞれ光量子計(JFEアドバンテック社製DEFI2-L)と圧力計(同社製 DEFI2-D10)を設置し、2019年1月15日から1月25日まで5秒間隔で連続観測を実施した。観測の結果、ノリ養殖直下は平均して光量子量が約75%低下していることが明らかとなった。この光量子の低下(遮光率y)をノリ葉体の長さ(x 単位:cm)の関数として表したところ、次式を得ることが出来た。

y=0.86e-0.1×x

次に、この遮光率を考慮した数値生態系モデルを開発し、植物プランクトン動態にどのような影響を与えるかについて検討した。養殖域で光の遮光が有る場合と無い場合の2つのパターンに分けてそれぞれ計算を行った。遮光率を考慮した場合は考慮しない場合と比べて、奥部のノリ養殖域付近において、植物プランクトン生物量を低下させていた。これはノリ養殖が水中の光環境を悪化させることにより、植物プランクトンの増殖を抑えているということを示している。