14:45 〜 15:00
[AOS14-05] 高解像度曳航式観測装置を用いた霞ヶ浦における物理構造計測
キーワード:水温躍層、混合層、風応力
霞ヶ浦では貧酸素水塊や富栄養化の影響により水質汚濁が発生し,生態系に悪影響をもたらしている.富栄養化や貧酸素水塊の発生の原因を明らかにするには物理構造の理解が不可欠である.そこで本研究では高解像度な観測を可能とするYODA Profiler及び係留系を用い,霞ヶ浦(北浦)の夏季における物理構造を把握し,湖沼内における詳細な物理プロセスを明らかにすることを目的とした.北浦は南北約25 km,東西約4 kmに広がる南北に長い地形を伴う湖であり,夏季には成層が強められ,水温躍層が発達する.湖盆中央における係留系による観測データから水温躍層以浅の薄い混合層が風応力により次第に分厚くなり,その後数時間で消失するという混合状態を計測した.この混合状態の詳細をYODA Profilerで計測した結果,上層の温水が下層の冷水と不安定構造を伴いながら混合すると同時に温水が風下側に移動していた.YODA Profilerから取得したデータから東西方向の物理構造はおおよそWedderburn numberで説明することができた.しかしながら定量的な水温躍層の鉛直変位は,密度構造の複雑さのために密度差を考慮したWedderburn numberで説明することは難しく,単純に風応力で説明できることが分かった.係留観測で取得した鉛直方向の水温時系列変化から表層混合層の厚さの時系列変化を求めた.日平均風速が8 m/s以上の日には表層混合層は湖底に到達し全層混合を引き起こす可能性が高いことが分かった.また南北方向の観測結果から,湖内では数kmスケールの波状の水温分布が形成されていることが分かった.観測された水温構造を3次元水理モデルSUNTANSを用いた数値計算と共に解析した結果,風応力に対する東西方向の水温変化の応答は複雑な湖岸地形に影響を受け,卓越する風向(東西)に対し垂直方向(南北)に帯状の水温構造を形成していた.この帯状の構造は,風下側の湾状地形内では温水が吹き寄せられ収束する傾向にあるため発生したと考えられる.観測された物理構造は,湖内の酸素濃度や植物プランクトン分布に強く影響していることも分かった.