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[AOS14-10] Lagrange粒子追跡モデルを用いた伊豆諸島周辺海域の物質輸送・拡散の評価
キーワード:潮汐、Lagrange粒子追跡モデル、黒潮
伊豆諸島周辺海域は,黒潮や渦,潮汐が複合的に影響する海域の一つである.伊豆諸島周辺海域において詳細な物質輸送や拡散についての知見は乏しいが,北太平洋全体の海洋環境や生態系を解明する上では重要と言える.そこで本研究では,領域海洋循環モデルROMSを用いた伊豆諸島周辺海域の流動再解析値に対してLagrange粒子追跡計算を実施し,黒潮や渦,潮汐が複合的に影響する海域における物質輸送および拡散の評価を行った.粒子は伊豆諸島周辺,黒潮流軸周辺,黒潮流軸南方の計3海域にリリースした.解析の結果,海域によって粒子の軌跡は大きく異なることがわかった.さらに,伊豆諸島周辺海域にリリースした粒子は30日後に60%以上の粒子が領域外へと輸送された.一方,黒潮流軸周辺および黒潮流軸南方にリリースした粒子は30日後に90%以上の粒子が領域外へと輸送された.潮汐の有無による対象領域の相対渦度を比較すると,潮汐を考慮することでサブメソスケールの渦度が上昇した.潮汐による物質拡散への影響を比較した結果,2日間スケールでは潮汐が物質の拡散に大きく寄与していたが,5日間以上の長い時間スケールでは潮汐が大きなスケールの移流の効果を抑制し,物質の輸送を抑制させていた.粒子の移動速度の周波数スペクトルは,半日周期にピークを示し,高い周波数では潮汐を考慮したモデルの方が高く,低い周波数では潮汐を考慮していないモデルの方が高い値を示した.このことから,潮汐はサブメソスケール渦などの高周波数の運動を促進させ,長い時間スケールの大きな渦運動を抑制させている可能性があることが明らかとなった.本研究より潮汐により発生する流れと黒潮由来のサブメソスケール渦が干渉し,伊豆諸島周辺海域の物質輸送に大きく関わっていることが明らかとなった.